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中国の宴会での会話のきっかけ

中国語を学習する者としては、中国人の宴会に招かれた際には中国語で会話したいものです。普通宴会では懇親が目的なので礼儀をわきまえて限り、言葉が下手でも問題ありません。酔いに任せてどんどん話せば良いです。ただ、話すと言ってもネタがなかなかないもので、自分のことや日本を紹介しているうちは良いですが、2回目3回目の人には自己紹介関係のネタは尽きているので工夫が必要です。私は出席する人を事前に確認してその人たちの仕事や社会活動などでの活躍を調べておき、それをみんなの前で伝えるようを心がけています。

中国の宴会ではお酒を1人で飲むことはせず、必ず誰かと乾杯して一緒に飲むのが慣習です。隣同士だけでなく万遍なく全員と乾杯していきます。中国料理屋によくある回転式丸テーブルはこうして乾杯しながらみんなと会話するのに適しています。しかし会話といっても外国人は言葉が下手でネタも少ないので、乾杯だけしたら後はダンマリ、その後もただ乾杯して酒を飲み続けて気が付けば一人でベロベロに酔っ払っているという状態になりがちです。その状態に陥らないために、乾杯する際にその人の活躍を一言紹介するコメントを言えば会話が広がります。できれば人から聞いた良い評判、なければその人の仕事が全体業務に貢献している点などを簡単に言えば良いです。なければちょっと具体例をつけて「ありがとう」でも良いです。必ず喜んでくれます。用意してきたその一言を言ってしまったら、その後続けて話す能力はないのですが、気にすることはありません。あとはその話をみんなが引き取って続けてくれます。それを聞いていてタイミングを見計らってまた同じセリフで褒めれば良いのです。日本人でも中国人でも褒められて喜ばない人はいません。好意的な雰囲気で会話が弾むと思います。

会話のコツという以前に人付き合いの当たり前の気配りですね。

簡単な言葉を口に出す

私の周囲には中国語を勉強してちょっとしたやりとりならできる筈なのに、聞いてニコニコしているだけで喋らない人が結構います。日本人は感じが良いので嫌われはしないのですが、聞いているだけではコミュニケーションが取れず相手にとっては何を考えているのか分からないので、なかなか人間関係を築けません。たくさん喋ろうとすると構えてしまうし、ずっと中国語で話を続けられると辛いという気持ちは分かります。「HSKで目標点をとるのが目的なので会話はしなくてもいい」と言いますが、それにしても会話をした方が実力はアップします。そこで簡単な返事や相槌だけでも中国語を口に出すことをお勧めしています。日本でも外国人が日本語で「そうですね」とか「すごいですね」とか一言でも口に出すとすごく親近感が湧きます。それと同じです。

使い易くて中国人の受け良い言葉は、好的(分かった)、是的(そうです)、厉害(すごいね!)、没错(その通り)、真的吗?(ホントに?)、对呀(そうだよ)、拜拜(バイバイ)などです。これだけでも相手には十分に意図が伝わり親近感が湧く筈です。そしてこれだけならその後無理に続けて会話する必要もないので、当面はこのレベルで簡単なコミュニケーションを続ければ良いです。そのうちに互いに親密になってきて話し易くなり、少しずつ無理なく会話ができるようになると思います。

子供の言葉を聞く

中国では小区内で遊んでいる子供をよく見ます。私が住んでいる小区にもちょっとした広場と遊歩道があり、お母さんやお婆さんに連れられた子供たちがたくさん遊んでいます。ベンチに座って眺めていると話し声も聞こえてくる訳ですが、当たり前ながらその中国語のうまさに驚きます。こちらはもう8年近く中国語をやっていてまともに話せないのに、どう見ても5歳にもなっていない子供が上手に会話しているのを聞くと天才ではないかと思ってしまいます。たまに話しかけられて答えたら発音が悪くて怪訝な顔をされた時には、思わず肩を落としてしまいます。子供の方も見た目から外国人だとは思っていなかったからか驚いて親に報告に行きます。向こうの方で何やらヒソヒソ話しているのを見ると差別されているようで何だか悲しくなります。子供はストレートです。

子供の話に耳を傾けるのは良いリスニングの練習になります。平易で短い話し言葉が多く、ゆっくり発音するので聞き取れる部分が多く、満足感が大きいです。そして観察していると子供が言葉を覚えていく過程が分かって参考になります。子供は友達や親に話しかけ、相手の言葉を聞いてそれを真似たり質問したりしながら、そのトピック関連の用語や言い回しを喋りながら丸覚えしていくようです。何度も繰り返し口に出すことの重要性が分かります。

子供に話しかけられて返した中国語が通じると大きな満足感があります。ただ、そのまま会話を続けると下手なのがバレてしまうので、早々に切り上げるのは言うまでもありません。

方言のススメ

方言が使えれば交流の幅が広がります。上手に取り入れて使ってみることをお勧めします。

中国には多くの方言があり、別の言語ほどに異なるものも多いことはよく知られています。普通語ができてもコミュニケーション難しいケースは多いです。普通語と全く異なる言葉の代表は広東語ですが、全国には異なる方言はたくさんあります。観光地に行くと旅行者がたくさんいていろんな中国語が飛び交っていて面白いです。中国の広さや多様性を肌で感じます。そんな国ですから、外国人が言葉が下手でも全く気にする必要がないのがありがたいです。私は学習当初は中国語を話しているとさえ認知されませんでしたが、ある程度できるようになってからは上海人に間違われることが度々ありました。一応中国語を話しているようだが発音が違うし?普通語を練習中の上海人?ということかなと思います。

方言を使うことで地元に人に好感を持たれますし、地元ではなくてもその人の特徴として愛されることが多いです。有名なのは卓球の福原愛選手で、子供の頃から中国東北地方に卓球留学した関係で東北弁がお上手です。子供だったので音を素直に吸収されたのだと思います。テレビのインタビューで愛ちゃんが東北弁で話す姿が可愛く、多くの中国人が彼女を好きになりました。もちろん日本人が卓球を習いにわざわざ中国に来たということにも好感を持たれたのでしょう。中国全土で愛されている日本人の1人です。

普通語の習得にすら苦戦している我々にとっては福原選手のように方言ペラペラになることは難しいですが、少しでも知っていると親しみを持たれますので、数語でも特徴的な言葉を覚えることをお勧めします。例えば重慶語であればOK!の意味の「要得!」が受けてもらえます。元気があって歯切れも良く、使って楽しい言葉です。南京であればこんにちは(もう食べた?が転じて)の意味の「阿吃过了」などが面白いです。

興味があることを聞いて喋る

中国語学習の動画をユーチューブで紹介されている楊小渓さんのヤンチャン CHで、カナダのSteve  Kaufmannさんという方のインタビューを見て驚きました。この方は何と20か国語がペラペラだということで、インタビューの大半を日本語で、終盤を中国語で会話していたのですが、どちらも非常に流暢でコミュニケーションに全く問題を感じませんでした。その彼が語学学習のポイントを紹介されていてとても重要だと思いましたので、紹介させて頂きます。

そのポイントは一言で言うと「興味があることをひたすら聞いて喋る」ことだそうです。文法学習とか難しい単語の暗記とかはキリがないし、ややこし過ぎて外国人には限度がある。だから高尚な言い回しを追求するのではなく、平易な文章でも意思疎通ができればそれで良いと割り切って会話のレパートリーを増やしていくのだそうです。実際この方の日本語を聞くと難しい言い回しは一切使いませんが発音がキレイで意思疎通に全く問題がありません。中国語も同様に上手でした。人間の脳は覚えては忘れを繰り返しながら少しずつ慣れてきて定着するものだそうです。だからひたすら聞く、そして使ってみる、それを少しずつ改善しながら延々と繰り返せば良いのだそうです。その際に大事なのが自分が興味があること、楽しいことから始めて、少しずつ広げていくことです。つまらないことはすぐに嫌になってしまって続かないからです。

日本人の言語学習は学校英語が元になっていて、しっかり文法を覚えて単語を増やしていくのが定石になっていますが、それが読み書きはできる一方で会話が苦手な原因になっています。語学学習をつまらない苦しいものにしてしまっている部分もあると思います。特に中国語中級レベルのインプットができている人は、それを使って会話することに重点を移せば、更に上達が図れると思います。

ボディーランゲージを活用する

「目は口ほどにものを言う」と言いますが目だけでなく、表情やしぐさ、外見といったボディランゲージから伝わる情報量は膨大です。表情筋の動きは心の中にある喜びや悲しみ、驚きや恐怖、軽蔑や嫌悪、怒りなどの感情が現れます。姿勢やジェスチャーからは、不安や動揺、プライドや自信、興味や関心といった情報が現れます。そのようなボディーランゲージを読み取る方法を教育・訓練している人もいます。これができれば面接やプレゼンテーションだけでなく、セールスや交渉などでも、会話を有利な方向へ導いていくことができるようになります。

言語学習者としてもボディーランゲージを理解することは重要です。言葉に気を取られ過ぎるとボディランゲージで発せられている重要な情報を見落とすことがあるので要注意です。聞いた時には分からなかった言葉もボディーランゲージで読み取れたメッセージを考え合わて理解できるケースも多々あります。発信の際にも言葉が分からなくても身振り手振りで伝えようとすると、相手が「○○のこと?」と確認してくれるので、その言葉を覚えることで言語力が向上します。

中国人のボディーランゲージは欧米人よりは多くありませんが、日本人よりは多いイメージです。喜怒哀楽がはっきりしていてそれが語調や表情、仕草に現れます。ただ、ゼスチャーで伝えようとするような工夫はあまりせず、あくまで言葉で伝えようとします。ゼスチャーはあまり上手ではありません。そのような中国人のボディーランゲージの特徴を理解して丁寧に観察すれば得られる情報が増えて会話が豊かになりますし、それに合わせて中国語の知識も増えていきます。

言葉が分からないからと臆するのではなく、ボディーランゲージを交えて積極的にコミュニケーションをとることで、相互理解と中国語力向上に努めましょう。

推測力を磨く

相手の言葉が聞き取れない時は推測するしかありませんが、その推測作業が語学力の向上に役立ちます。私は中国語が少しできるようになってから通訳さんが面白がって付いてくれないことが増えたのですが、言葉が十分に分からなくても何か反応したり決めたりしないといけない場面は多々あります。そういう時に、もちろん言葉は必死で聞くのですが、それ以上に会話の背景やその場の状況から反応を考え、話し手の表情や口調や身振り手振り、周囲の人の反応などを五感を総動員して感知しながら、頭フル回転で相手の意図を推測します。この訓練を続ければ、少しだけ聞き取れる言葉と組み合せてかなり正確に読めるようになります。

相手の意図が読めたら、聞き取れなくて一旦流した音を頭の中でリピートし、何を言ったのか追認します。言葉を聞いて意図を理解するのではなく、意図を理解(推測)してから言葉を理解するという逆の順になっているのですが、瞬時にやれば会話に違和感はほとんど生じません。更に1回目の話しかけが分からなくてもとりあえず拒絶はせず、分かったような顔で聞き続けることで、2回目3回目の話しかけで意図が分かる(推測できる)ことも多々あります。これらの作業は集中して必死でやっているので追認した言葉もしっかり記憶に残ります。私はこの作業によって中国語力が向上してきたと思います。

私は中国で仕事をする中で、この推測能力の方が伸び、後から中国語力が付いてきているというのが実態です。やむを得ない状況になったら誰もが当たり前にやることですが、語学力向上のために敢えて自分をそういう状況において訓練することをお勧めしたいです。

中途半端に通訳に頼らない

仕事で通訳さんに入ってもらうことが多いですが、中国語が少しできる人が中途半端に中国語を使いつつ中途半端に通訳さんに頼って、混乱している場面をよく見かけます。中国語の上達を目指す人なら、簡単な会話は多少下手でも全て中国語で通す心意気が必要です。

よくある中途半端は、日本語で話している中で知ってる単語や言い回しだけ中国語を使うケースです。本人は少しでも中国語を使う方が伝わり易いと思うのかもしれませんが、日本語で話している中で発音が正確にできない中国語を使ってみても、まず中国語を話したと認識されません。発音が下手でも聞き取ってもらえるのは、最初から中国語を話していると認識してもらっていて、変な発音でも中国語の何かだと思って推測してくれるからです。中国語を使うつもりなら下手でも最初から中国語で話すべきです。そしてうまく言えないところだけ通訳さんにお願いするのです。

また、相手の中国語での問いが分かった時だけ通訳を待たずに答えるというケースもあります。しかもその答えが何を言いたいのか分からない。通訳さんは何をどう訳せば良いのか分からず混乱します。やるなら全て自分で聞くことを前提に、分からないところだけ教えてもらうという方がスムースに会話できます。それができないのであれば中途半端なことをせず全て通訳さんにお願いするべきです。

何より学習者にとっては、中途半端にお願いすることで自分で考えなくなるというデメリットが大きいです。知っている言葉を駆使して何とか意思を伝えようとする行為は、自分ができない部分を顕在化させて改善するのにとても良い方法です。そこを通訳さんに任せてしまったのでは全く成長がありません。どうせネイティブレベルにはなり得ないのだからいくら勉強しても下手で当たり前、くらいの気持ちで恥ずかしがらずに話しましょう。みるみるうちに上達すると思います。

道案内をする

中国語を学んでも使う機会がないと面白くありません。映画や本などで楽しむことはできますがやはり語学の醍醐味は人との交流、会話だと思います。親しい友人や同僚がいる人ならともかく、中国人の知人が少ない人には会話の機会はあまりないものです。

中国にいる人の場合はいい方法があります。道案内をするのです。中国では道を訊ねてくる人がとても多いです。日本人のように人に聞くことに躊躇がありません。どこででも捕まえて遠慮なくどんどん聞いてきます。うまく答えられずに「私は外国人だから…」と答えても「それがどうしたの?」みたいな顔で何度も聞いてきます。考えてみれば外国人であろうが何者であろうが道を教えてくれればいいのであって、聞くのを止める理由にはなりません。だから「知りません」と答えたら諦めてくれます。

これを積極的に受けたら会話の練習になります。短いですが中国語で意思疎通し人の役に立てたとなれば充実感、達成感があるものです。会話といっても難しい言い回しを覚える必要はなく、「真っ直ぐ行って次の角を右に」とか「あのビルの対面」とかの決まり文句をいくつか覚えておいたら十分に通用します。時間があるなら会話をしながら連れて行ってあげれば良いのです。

必要なのは土地勘があることと目的地を聞き取る能力があることです。土地勘の方は常日頃散策して覚えれば良いですが、聞き取りはなかなか難しいものです。しかも広大な中国には方言も多いので全く聞き取れない場合もあります。そういう時でも一度で諦めるのではなく、何度も言ってもらって丁寧に聞いて、それでも分からなければ書いてもらう等で理解するように努めましょう。案外なんとかなるものです。

日本にいる人の場合は中国人観光客の道案内をすることが考えられますが、自分ではやったことがないので分かりません。ただ、中国人は人懐っこい人が多いので、困っている人を見かけたら中国語で話しかけると喜ばれるのと思います。

男と女の中国語会話術(★★★★★)

男女のお付き合い、恋愛や結婚、性の話などは、タブー意識や気恥ずかしさがあって学習の場ではやんわりと敬遠されます。しかし、実際語学を習得するあたって恋愛がとても有効なのは事実です。恋人との会話や活動は感情豊かに真剣に取り組みますので、語学力は格段に上がります。また、近年日本人と中国人の国際結婚も増えていて、真剣に恋愛をして結婚を目指す、あるいは円満な結婚生活を営もうとしている人にとっては、男女にまつわる言葉はとても重要です。

男女の会話の言い回しを紹介した書籍、「男と女の中国語会話術」をお薦めします。一般の教室や教材では紹介されない、異性へのアプローチや深い付き合いに至るために使う言い回しが豊富に紹介されています。誰でも興味がある男女の会話なので楽しく読むことができますし、真剣に恋愛・結婚に取り組む人には貴重な資料です。私の知る限りこの本しかないので、是非ご覧になってみて下さい。

男と女の中国語会話術―学校では教えてくれない!

男女にまつわる話として知人から聞いた話を紹介します。日本のおじさんが中国に旅行に行き、飲み屋で(お客さんとして)モテるというのはよく聞きますが、農村に行くとおばさんたちに「結婚して下さい。妻が無理なら二号さんでも三号さんでも良いので。」と真剣に迫られることがあるそうです。極貧状態なのでなんとか養ってもらえないだろうか?ということだそうです。中国は国全体では急速に発展しましたが、農村地帯ではまだまだ極貧世帯が多く、貧富の差が拡大しています。日本でモテたことなどないおじさんが、女性から次から次へとそういう申し出を受けて面食らうそうです。

そんな状況に乗じて、日本のおじさんが中国の農村にお嫁さんを探しに行くこともあるそうです。ただし希望は若い女性。目的は自分の親をみてもらうこと。日本は核家族化が進展して親をみる子供が少なくなっています。そして最近の日本の若い女性はお年寄りの介護には非協力的な人が多い。一方、中国人は家族、特に目上の人を大切にするので、親身になって協力してくれるそうです。中国人女性側も日本に行ってお年寄りの世話をするだけで、極貧状態から抜け出せる、年配の夫は年配で早く亡くなって遺産をもらえる、配偶者年金が支給される、ということで、結婚を承諾する人は相当数いるそうです。愛情たっぷりの結婚というわけではないかもしれませんが、win-winの良い施策だと思います。

日本語が堪能な親しい中国人の中国語が最も分かり難い?

少数意見かもしれませんが、日本語が堪能な親しい中国人が中国語を話すと全然分からないという人がいます。私も同類で、友達、同僚、通訳さん等々の日頃日本語で会話している人が急に中国語に切り替えるとサッパリ分からないという経験をよくします。感覚的に、付き合いがあって慣れた人の中国語の理解度を+、初めて会った人が話す中国語の理解度を±0とするなら、日本語で付き合ってきた人の中国語の理解度は-というくらい、分かり難い感じがあります。しかもそれはアメリカ人など他の国の人よりそのギャップが大きいと感じます。皆さんは如何でしょうか?

自分自身の感じ方を深掘りしてみると、そういう人たちは自分にとって日本人と同じような対象になっているのだと気付きました。日本語を学ぶ人は基本的に親日で日本の文化や考え方に理解があります。その上同じ東アジア人として見た目が似ているので、ほとんど違和感なく日本人のように接しています。その(自分にとっての)日本人が突然流暢な中国語を使うと、日本語で交流する時とのギャップ大きさへの戸惑いに、こちらが中国語を上手く使えない気恥ずかしさ等が加わって勝手に焦ってしまい、分かるものも分からない心理状態になっているものと思われます。その人の中国語だから分からないのではなく、自らが勝手に作り上げたメンタルブロックが原因だと思います。

「◯◯さん、ちょっと中国語で話をしてみようよ」と言われた時は要注意、ひと呼吸おいて「この人はいつものあの人とは違う人」と認識を切り替えた上で会話に入るようにしています。その工夫で少しは改善してきたと思っています

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挨拶の概念の違いを理解する(★★★★)

中国で仕事や生活をした人は、中国人は日本人ほど挨拶をしないことに気付かれると思います。日本人なら朝人に会えば「おはようございます」、ご飯を食べる前には「いただきます」、人に会ったり打ち合わせをしたりしたら「よろしくお願いします」、初めて会う人には「初めまして」等々、たくさんの挨拶の習慣があります。

中国にももちろん挨拶はありますが、日本ほど多くはなく、日常的にはほとんど言わないのが普通です。あまり挨拶をされると返ってよそよそしく感じたりするようです。挨拶なしにいきなり話に入るくらいが親しいと感じられるようです。

そのような習慣の違いから、日本語的な挨拶言葉で、中国語でも存在はするけど日常生活や仕事でほとんど使わないものがあります。

まずは「请多关照」、「よろしくお願いします」ですが、日本人のように常用連発することはなく、かなり改まったビジネスシーンで使うもののようです。連発されると中国人はなんだか距離を感じてしまうようです。「初次见面」、「初めまして」ですがこれもほとんど使わないようです。

よくよく聞いていると意外と使われていないのが「早上好中午好晚上好」、中国語の教科書に必ずあるので、日本人的には使ってみたい気がしますが、中国人同士で使っている場面に遭遇したことがありません。代わりによく聞くのは、朝なら「早」、昼や夜は「吃饭了吗?」くらいなものです。

日本人のマナーや礼儀は高く評価されています。私は外国にいても日本人は日本人らしく振舞うべきだと思っています。外国に住んだらその国にかぶれて日本的なものを全て否定するような人もいますが、それには全く賛同できません。ただ、中国なら中国で、相手側にも習慣や考え方がありますので、それを理解した上で交流するのが上手なコミュニケーション、効果的な言語の習得に繋がると思います。

日本語の特異性を理解する(★★★★)

日本語は非常に細やかで曖昧な言語だと思います。ほんのわずかな表現の差で微妙な意味を伝えます。それに対して中国語を含む多くの外国語は意味を伝えることが最優先で、表現がストレートです。それを理解しておかないと思わぬ行き違いが生じます。

日本語は、まず直訳困難な表現が多いです。例えば「恐れ入ります」とか「お邪魔します」。これらは多くのニュアンスを含んでいて、直訳では伝わりません。

そして敬語。尊敬語と謙譲語と丁寧語を外国語で表現するのはかなり無理があります。

そして語尾のニュアンス。「分かります」「分かるよ」「分かるけど」「分かるもん」などの語尾にはニュアンスがあるので、これらも直訳が難しいです。

そして複数の異なる意味を持つ言葉。「いいです」「すみません」「けっこうです」「どうも」「一応」等々。これらは状況が分からないと何を伝えたいのか分かりません。

我々日本人は、そういう言語を背景にしているのだということを認識することで、外国人とのミスコミュニケーションを少なくすることができると思います。

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日本人のコミュニケーションスタイルを理解する(★★★★★)

外国人との接点が少ない人には理解し難いかもしれませんが、日本人のコミュニケーションスタイルはグローバルでみるとかなり特殊です。それを自ら理解しておくことで、外国人とうまくコミュニケーションがとれるようになります。

特殊なのは主に二つ、ハイコンテクストと話の順序です。

コンテクストとはコミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などのことです。この共通性が高いことをハイコンテクストといい、日本はそれに当てはまります。所謂「以心伝心」のスタイルです。

中国もアメリカなどと比べるとコンテクストは高いそうですが、日本ほどではありません。簡単な意思表示で全て伝わると思わず、はっきり言葉にして説明する必要があります。「そんなの言わなくても分かるでしょ?」は日本の中だけにしておいた方が無難です。

もう一つは話の順序です。日本人は背景から入って理由や依拠を長々と説明して、最後に結論です。人によっては結論がない場合もあります。これが、「日本人は何が言いたいのか分からない」と指摘されることに繋がります。外国人と交流する際には、あまりにビジネスライクで無味乾燥にならない程度に、結論をはっきりと早いタイミングで述べるようにした方が良いと思います。

グローバルコミュニケーションでは相手の言語や習慣を理解することが重要ですが、同じく自分のスタイルをしっかりと理解しておくことが大切だと思います。

値引き交渉(★)

以前はよく「値引き交渉で中国語を練習する」というような話がありました。今でも中国語の練習方法を紹介する読み物に値引き交渉を推奨しているものもあります。実は私はあまりそういう経験がなく、特に最近では値引き交渉そのものを見る場面がほとんどないので、本当にそれで練習になるのか疑問です。

私が経験したのは20年ほど前に台湾で現地の同僚が夜市に連れて行ってくれて、私が買うものを彼が値切ってくれたことです。当時は私は中国語が全くできなかったのですが、ものすごい言葉の応酬に、「これは外国人には絶対に無理だな」と思った記憶があります。

自分では10年くらい前に北京のおみやげ屋さんで見つけた置き物を値切ったことがあります。難しい言葉は使えないので、ただひたすら「安くして」と言い続けただけでした。3割くらい安くしてくれて交渉自体は楽しかったのですが、言葉の練習にはなりませんでした。

その後中国で生活する機会を得ましたが、現在は社会が発展してきたこともあって、値切ることができる店は周囲にはほとんどなくなった気がします。値切っている中国人もほとんど見ません。大きなデパートや高級店は以前から値切れませんでしたが、一般的な個人商店や商業ビルでも値切れません。一声かけようとすると最初から「谈价钱」と言われることもあります。

日本にいると中国社会の急激な変化を認識するのは難しく、過去の固定観念や古い情報で判断してしまいがちです。現在の中国では値引き交渉で言葉を練習するのは無理だと思います。

話しかけられても臆せず話す(★★★)

中国人が気さく過ぎるのか日本人が警戒し過ぎるのか、中国では街を歩いていると日本ではあり得ない頻度で声をかけられます。特に多いのが宅配便の人や旅行者に道を聞かれるケースです。こちらが話せなくてモゴモゴしていても平気でどんどん聞いてきます。何とか「我是外国人」と言ってみても、それがどうした?という感じでどんどん聞いてきます。考えてみれば外国人であろうが喋りが下手であろうが、聞きたいことを教えてくれれば良いだけなので、そこで止めるというのも確かに変な話ではあります。やはり日本人が警戒し過ぎという部分もあるのでしょう。

中国に来た当初は言葉が分からないのにしつこく聞かれるのが嫌で、なるべく目が合わないようにするとか、近付いてきたらサッサと立ち去るとか、「帅哥!」と話しかけられても気付かないフリをしたりしていました。でも、ある時思いっ切り正面からしっかり目を見て近付いて来られて避けようがなく、仕方がないので聞いてみました。すると意外にも結構分かって、道を教えてあげることができました。これに気を良くした私はそれ以降は避けずにとりあえず聞いてみるようにしました。旅行者の場合は方言がキツくて全然分からないようなこともありますが、うまく教えてあげられるととても気持ちが良いです。

ある時には、公園で中国でお馴染みの婚活ビラを眺めていると、親御さんとおぼしき女性に「どんな女性を探しているの?」と話しかけられました。「日本人だ」と言ってもおかまいなしに聞かれましたが、「既婚だ」と告げるとやっと売り込みをやめて、今度は娘の自慢話や心配話を延々とされました。

知らない人と話すのは現代の日本人にはやや抵抗がありますが、中国人、特に年配の人は、こちらが言葉が下手でも面白がって話してくれる人が多いので、臆せずコミュニケーションを楽しんだら良いと思います。

名前を覚えられない時の暂定対処法(★★★)

中国で仕事をしていると多くの人と出会いますが、名前が覚えられなくて困ります。こちらは覚えていないのに向こうは自分を知っているというケースです。改めて会った時に向こうは親しげに話しかけてくれるのに、こちらは思い出せなくて非常に気まずい思いをすることになります。

中国に仕事をしに来る日本人は、多くの場合少数、あるいは単独で、多くの中国人と接します。名刺交換をしても相手の数が多過ぎてなかなか覚えられません。懇親会などで次々に乾杯の挨拶に来てくれると、向こうは新密度を増して覚えてくれますが、こちらは相手が多いのでやっぱり覚えられません。しかも次第に酔っ払ってきて記憶が怪しくなるのでさっぱりダメです。二日酔いで目覚めた翌日に、ポケットにたくさん名刺が入っているけど、誰が誰だかサッパリ覚えていません。しかも中国人は同じ姓の人がたくさんいて、それも覚え難い要因になっています。

困り果てた私は、考え抜いた末に素晴らしい解決策を見付けました。それは、中国人に多い姓の李/張/王を日本語読みにして混ぜて早口で、且つ「さん」を付けて堂々と呼びかけることです。「(リ)チョワンさん!」みたいなイメージです。そもそも日本人の下手な中国語の発音は通じないので、自分の名前の日本語読みっぽい呼びかけを「さん」付きで聞いたら、何となく名前を呼ばれた気になります。李/張/王を混ぜているので類似発音のものを含めて多くの姓をカバーしているはずです。そして何より、何やら堂々と呼びかけられるので、知人だと認識して挨拶しているという好意は伝わります。そして、その後会話をしながら「この人誰だっけ?」とじっくり考えるのです。私はこの秘策で多くの窮地を脱してきました。


今となっては中国語レベルが多少なりとも上がりましたし、冷静に考えると相手に失礼ですしちょっと恥ずかしいのでもうやりませんが、中国語初心者で中国赴任の初期に人間関係を構築する暫定策としては秀逸だと思っています。笑

セミネイティブと中国語で会話する(★★★★)

中国語は使用者が世界で最も多い言語ですが、使用者の中には中国人だけでなく、東南アジアなどで生活する華僑の子孫、中華系の人々が沢山います。彼らは母国語を使うと同時に曽祖父や両親が使っていた中国語を使える人がほとんどです。そういう人たちをここではセミネイティブと呼ぶことにします。

中国語を学習中の非ネイティブの人と中国語で会話する楽しさとその課題は別のコラムでお伝えしました。非ネイティブとの会話での課題は、互いに正しい使い方ができているか分からないこと、発音など互いの悪いクセが移ってしまうことなどです。それらがなく楽しく会話できるのがセミネイティブとの会話です。これはあくまで中級程度の人に有効な施策です。

私の知っている範囲ではマレーシアにそういった方が多いと思います。マレーシアに出張に行った中国人の同僚によると、クアラルンプールは街に中国語の表示が溢れているし現地の人も中国語が話せる人が沢山いるので、中国語ができる人なら困ることは全くないということでした。私自身はマレーシアには行ったことがないのですが、何人かマレーシアの知人がいます。彼らのうちの一人が中華系で、中国語がある程度話せます。彼と最初に会った時は英語で話していたのですが、私が中国語を学習していることを告げると彼が中華系で中国語ができることが分かり、中国語に切り替えました。私の方は英語より中国語の方が下手なので少しぎこちなくなりましたが、彼の方は中国語の方が上手く「親族との会話で慣れ親しんだ中国語で話せることが嬉しい」と、とても楽しそうに話していました。慣れ親しんだといってもネイティブではないので、比較的平易な言葉を使ってゆっくり話すので、私レベルでも分かり易かったです。発音や文法も正しいのだろうと思います。(少なくとも学習中の非ネイティブよりは正しい)マシンガンのように早口で難解な言葉を使ってさっぱり解らないネイティブとの会話よりずっと練習になると思いました。

東南アジアやオーストラリアのアジア系の知人がいる人は是非中国語ができるか聞いてみて下さい。素晴らしい練習台になってくれる人が身近にいるかもしれません。

中国語オンリーで仕事をする(★★★★)

私は3回目の中国赴任に際して、中国語オンリーで仕事をしてみようと考えました。目的は自身の中国語力を強化すること、そして中国人の同僚とのコミュニケーションを良くすることです。前回から約一年半のブランクを経ての赴任でしたが、それなりに長い間勉強してきたのだからまあ大丈夫だろうと楽観的に考えて、赴任早々「中国語オンリーで仕事をする!」と周囲に宣言しました。導入教育として半日ほど就業規則や業務上の様々なルールを中国語で説明してもらったのですが、これがなんと自分でも驚くほど良く分かったのです。すっかり気を良くした私は、本格的に中国語オンリー宣言をして翌日からの業務に臨みました。しかし導入教育の時と違ってどうもよく分からない。耳が慣れてないからか?と思ってしばらく続けていたのですが、一向に聞き取れるようにならない。そこでふと気が付いたのです。導入教育の内容は前回の赴任時に聞いたものとほぼ同じだったということに。内容が記憶の片隅に残っているから、聞き取れたのでなく、思い出しただけだったのです。これはヤバイと思って、周囲に「中国語オンリー宣言は取り消す」と言っても、みんなニヤニヤして「初志貫徹で頑張ってね」ととりあってくれません。そしていろんな問題に悩まされるようになりました。

まず、通訳さんが来てくれなりました。当社では通訳専門のチームがあり、申請すれば打ち合わせの場に来てくれるのですが、中国語オンリー宣言をしてからというもの、私が頼んだら笑って来てくれない、同僚は私のためには通訳を頼んでくれない、という状況になってしまいました。また、同僚が容赦なく中国語で話すようになりました。中国語オンリーだと宣言したのだから当たり前なのですが、以前は直接話をするにしても英語を交えてくれたり、中国語ならゆっくりと簡単な用語を選んで話してくれたりしていたのですが、宣言の後は容赦なく中国語だけでネイティブ同士の会話と同じノリでペラペラ話してくれます。もちろん半分以上分かりません。言われることが理解できなくて、曖昧な受け応えをしたり答えられなかったりしたら「明確に否定しなかったから合意」などと都合よく解釈されたりします。仕事上の軽い会話なら良いのですが、重要な案件だと重大な問題につながります。実際に何度か痛い目にあいました。ある時は、仕事の付き合いがある中系サプライヤーが日本のとある会社に「○○社の○○さん(私)の推薦で御社と提携することを検討しているので近々貴社を訪問したい」と身に覚えがない連絡をされてしまい、その収拾に一悶着ありました。そんな経験をしましたので、重要な案件の時だけは頭を下げて通訳さんをお願いすることにしました。

中国語力が向上したかと言われると、毎日中国語のシャワーを浴びているので、最近になって聞き取れることが増えてきたように思います。話す方はほとんど進歩していません。ただ、もう一つの目的のコミュニケーションについては、無謀な試みと下手な中国語がウケてすっかり人気者になりました。下手でも話そうと頑張る姿を好ましく思ってくれているようです。今後も任期一杯、頑張って続けてみます。

中国一人旅をする(★★★)

学習というより修行、訓練です。旅に出るといろんなアクシデントに見舞われますが、それを独力で乗り越えることで達成感と中国語力への自信をつける方法です。ガイドや他人に依存する団体旅行ではダメ、あくまで一人旅です。中国旅行では(以前に比べてずいぶん減りはしましたが)愉快なアクシデントが次から次へと発生します。チケットの購入場所が分からない、行っても買い方が分からない、聞いても言葉が分からず(方言もあって)あるいは説明が不親切で分からない、間違ったチケットを握らされる、ホテルの予約が入っていない/勝手にキャンセルされている、地図や時刻表がデタラメ、頼んだ迎えが来ない、白タクにボラれる/タクシーに違う所に連れて行かれる等々、最初は憤っていてもあまりにたくさん発生するので最後には笑ってしまいます。私は他の国でも仕事をしてきましたが、こんなにデタラメな(だった?)のは中国だけです。そのデタラメをチャンスととらえて、持ち前の中国語力を駆使して解決していくことで自信を深めるのです。

私の体験談を一つ紹介します。東北の街長春から夜行列車で天津に行こうとしていた時のことです。チケットの出発駅の記述の横に何やら書いてあるので店員さんに確認したのですが「出発は長春駅」としか言いませんでした。当日の夜に長春駅に行って待合室で待っていましたが、いつまで経っても乗る便の表示が出ない。嫌な予感がして駅員さんに聞いてみると、工事中か何かの理由で長春駅は長春駅でも数キロ離れた場所にある臨時のプラットフォームから出るのだということでした。その時点で既に出発30分前、もうダメかと思いましたがとにかく急いで外に出て、たむろしていたバイクタクシーのおじさんをつかまえて行き先を告げました。「ちょっと無理すれば間に合うかもしれないがどうする?」と言うので「頼む!」と飛び乗りました。おじさんは雪が半分溶けた泥道を信号無視、歩道走行、私有地横断などの「ちょっと無理」なテクニックをフルに使って疾走して、タクシーで20分くらいかかるところを10分弱で着けてくれました。私はおじさんに「お釣りは要らない、ありがとう!」と札束を押し付けてプラットフォームに走っていきました。それがとんでもなく長い列車です。とりあえず近くの車両に乗り込んで列車内を移動しようとしましたがダメだと言われて、指定席の車両まで必死で走りました。そしてギリギリ間に合った、という話です。まだ中国語の学習を始めて一年くらいの頃だったのですが、駅員さんとのやり取り、バイクタクシーのおじさんとのやり取り等々で窮地を脱したことに達成感と自信を覚えました。すっかり気を良くした私は、「ベッドを代わってくれないか」とやって来た大学生くらいのお嬢さんたちの依頼にも中国語でスラスラ応じました。お嬢さんたちは私の発音に怪訝な顔をして「你是上海人吗?」と聞いてきました。発音が変だと思われたからですけど、「外国人か?」ではなく「上海人か?」と言われたのがなんとなく嬉しかったものです。また、夜行列車では途中停車駅に泊まった時にトイレに行こうとしたら「ダメダメ、外でしろ」と言われました。当時の寝台列車のトイレは下が開いていてブツを線路に落とす方式だったので、停車駅でみんながするとそこだけ山盛りになってしまうからです。また、これは私が悪いのですが、三段ベッドの一番上で焼酎を飲んでいて隙間から瓶を落っことしてしまって、冷や汗をかいたりしました。下のおじさんに直撃はしなかったようで、丁寧におわびを言って許してもらいました。

このような体験をして無事帰還すると、中国語学習者として一回り大きくなった気がしたものです。しかし、考えてみるとこれは度胸がついたというだけで、言語能力の向上には習得には大した役には立っていないですね。