起業・廃業慣れ

コロナショックでは資金繰りがショートした零細企業や小売業、飲食店等々の廃業が相継いでいます。日本はまだ経済活動抑制の最中なので今後更に廃業は増え、経済不況は長引くと思われます。そこで懸念されているのは自殺者の増加です。過去の経済危機の際には経済苦による中高年の自殺が増えています。コロナでの死者より自殺者の方が多くなるのではないかと懸念されています。

中国は日本より起業・廃業を繰り返す挑戦者が多いと思います。気軽に開業してダメならサッサと見切りを付けてやめているように見えます。日本人の私からみると、貯金もノウハウも何もない普通のおじさんが突然麺屋さんを始めたり、若い女性が友達と一緒に洋服屋さんを始めたり、そして暫くして見に行ってみると無くなっていたりと、とにかく目まぐるしく起業廃業を繰り返しています。「絶対にいける、これで大金持ちだ!と思ったけど全然ダメだった。お金なくなっちゃったよ。はっはっは」みたいなノリの人がたくさんいます。

中国は元々自殺率でみると日本の三分の一くらいだそうです。今回のコロナの影響で廃業している店は私が知っているだけでもたくさんありますが、経済苦で自殺したという話はあまり聞きません。もちろん報道していない、あるいは私が知らないだけかもしれないのですが、元々起業や廃業を苦にせず繰り返している様子を考えると、実際に自殺者は少ないのではないかと思います。

そういう部分は日本人も中国人を見習って、ダメならダメでさっさと諦めて次にいくくらいの気楽さがあっても良いのではないかと思います。それが適切な損切りになることもあると思います。そして、廃業や倒産やリストラなどはもちろん辛く苦しいものですが、どんなことでも死ぬほどのことではない筈です。「死ぬこと以外かすり傷」です。

死ぬこと以外かすり傷

Audible (オーディブル) – 本を聴くAmazonのサービス

経済活動再開の先行事例

コロナウイルス対策で停止した経済活動を再開するのも判断が難しいものです。一刻も早く活動を再開すべきだが感染が再発してはいけない。中国の取り組みを参考に記録しておきます。

中央政府が出した方針は「新規感染者が一定期間以上発生していない市は、感染防止策が徹底できているかを確認した上で、市の責任で慎重に再開をしても良い」といったものでした。この「責任」の認識が厳密で、感染者を出したら責任者一同クビになります。だから全員必死で取り組みます。そして市政府は、空港や駅など流入の窓口になる場所のチェックは継続し、公共の場所の消毒等や小区への入場の際の検温等を継続しました。そして営業再開を希望する各会社にある条件を基に承認を与える方法をとりました。社員とその家族に感染者がいないこと(いる場合は隔離されていること)、感染防止の取り組みが明文化されており実際に実践されていること、マスクや消毒液などの備蓄が一定数以上あること、等が審査されました。これも感染者が出たら経営者の責任を厳しく問われるので、経営者は必死で取り組みます。そして企業は承認された内容を忠実に実行し市政府はそれを監査します。

企業の対策は、通勤は自家用車か会社のバスを使う(公共交通機関を使わない)、体温管理を行わせ発熱者は出勤させない、入構時に検温を行う、事務所の窓や扉は開けておき触れさせない、エレベーターは停止、会議はWebを基本とし会議室に集まる場合は人数を制限し距離を保つ、食事は弁当式にして食堂に集まらず各自の席でとる、マスクを常時着用の上無駄な私語は禁止、社内の定期消毒、といったものでした。そして社内の安全担当部門が実施状況を確認し、違反者は全社に開示の上上司に罰金を課しました。出張や社外の人の訪問は禁止し、様子を見ながら慎重に再開しました。

結果として南京では社内で新規感染者が発生した会社はありませんでした。(2020年4月20日時点)

考えられうる対策は全て実施した上で慎重に再開していったということです。特徴は上位組織から末端まで責任を個人レベルで明確にして管理を徹底することです。これは関係者が本気になって取り組むという優れた作用がある反面、そのプレッシャーが隠ぺいを生むというリスクもあるとは思います。

中国はやりたい放題なのか?

私は比較的長く中国に関係しているので「実際のところ中国ってどうなの?あの手この手のやりたい放題で世界の覇権を握ろうとしているの?それともそうではないの?」と聞かれることがあります。私の答えはもちろん「分かりません」です。中国に住んで仕事をしているだけで、国際政治研究家でもジャーナリストでも、国家機密にアクセスする技術者でもない私にそういうことを判断する確たる情報があるはすがありません。仮にあっても誰も断定はできないと思います。どの国の政府でも基本的には国益を考えて意思決定をします。それが他国の不利益になるような話はそこら中にある訳ですから、他国の不利益を狙ってやっているかどうかなど分かりません。私に分かるのは一般の中国人の考え方の一部や言動、SNSで語られている話や反応、中国国内の報道くらいのものです。

その観点で例をあげると、最近の「中国やりたい放題」説には、「新型コロナウィルスが中国により生み出された生物兵器だ」というのがあります。中国は新型コロナを世界中に拡散して力を削いで、意のままに操ろうとしているという説です。一方で事故説として、エイズ根絶のために研究していた人工生成ウィルスが流出したものという説や、研究していたコウモリのコロナウィルスが流出したものという説があります。あとは自然感染説、武漢の市場で感染したというもの。

生物兵器ならば対策が分かっていないと自分たちも被害を受けます。中国でも相当数の自国民が亡くなり経済も大打撃を受けた訳ですからさすがにこれはないと思います。実際に住んでいて、実は中国にだけ特効薬があって国内の感染者、あるいは特権者だけに密かに処方している、みたいな気配は感じられません。報道規制があるといっても今の中国でそんな話があればSNSを通して瞬時に拡散されます。

研究所からの事故流出、これは分かりません。急速に発展してきた中国は何事にも管理が甘い部分がまだまだ残っています。そして良くも悪くもメンツの国、失敗を素直に認めるかどうか分かりません。逆にメンツを重んじるからこそ事実が分かれば直ぐに開示するということも今の中国ならあり得ます。そして自然界からの感染、これは衛生管理にまだまだ問題がある中国では十分にあり得る話です。政府主導で特定の生き物を食材としたものは食べてはいけないという指示もあります。ただ、そうであるならば何故これまでは感染が拡がらなかったのだろう?という疑問が生じます。

中国と比較的長く付き合ってきたつもりの私がこの程度の認識なので、あまり関係していない一般の方に「やりたい放題なのか?」は分からないと思います。分からないのであれば憶測で面白おかしく語るのは危険なことです。日本の報道にも正直感心しないものが多いですが、一般の方々がTwitterやYouTubeで人気を得るために無責任に刺激的な言葉で自論を披露するのは止めるべきだと思います。

本気の働き方改革の必要性

日本では高齢化少子化の進展の見通しから働き方改革の必要性が唱えられて久しいですが、実際にはほとんど何も進んでいなかったことが、コロナ感染拡大においてテレワークに移行できないことで露呈したと思います。在宅勤務が必須である状況になって初めて準備が何もできていないことに焦る会社がほとんどでした。社員が家に持っていくPCが足りない、スマホが足りない/個人のスマホを使わせるルールや対策がない、セキュリティー確保のためのVPNが足りない/機能しない、適切なソフトやアプリがない/知らない、にわか導入で使い方が分からない等々。日本の企業の弱点が浮き彫りになりました。

私が勤める中国の会社では元々個人のスマホを仕事に使っており、企業微信というアプリを使ってコミュニケーションをしていました。そこにコロナショックが来て在宅勤務や遠隔業務を余儀なくされたのですが、慌てることも特別なことをする必要もなく、企業微信の会議機能を使ってテレワークに移行しました。日頃から使っているスマホ・アプリなので使い方が分からないなどということもありません。生産などの現場のモノを扱うようなこと以外の大半の仕事はテレワークで進められました。

特に我々外国人にとって良かったのが日本に帰国していてもスマホ一つで打ち合わせを伴う仕事を進められることです。本当に便利だと実感しました。しかしそんな場所を問わず仕事ができる状態なのに日本の本社には管理のために出社することを求められ、コロナ感染リスクがある中、わざわざ会社に行って事務室で個々人がスマホで仕事をする(そして互いがうるさくて結局それぞれが会議室に籠る)という珍妙な状態になりました。

その後日本でコロナが蔓延し、自宅待機を余儀なくされた時、中国側は当然テレワークで仕事を進められると思ったのに、日本側はテレワークどころかPCを持って帰れないのでメールすらできず、結局一斉休業で完全に仕事が止まるというお粗末な事態になってしまいました。

日本でも今後はさすがにテレワークを真剣に考えるでしょうが、旧態依然とした考えで新しい便利なモノを取り入れることを躊躇する、セキュリティー等々でできない理由を見つけてきて現状維持に甘んじる、ある意味高齢化の弊害ともいえるそういった体質を抜本的に変える必要があるのだろうと思います。

友好は自分事化から

コロナ感染拡大では、中国がコロナを発生させてそれを全世界に拡散して迷惑をかけ、先に自分だけ終息させて経済活動を再開した自分勝手なひどい国だと非難する声がたくさん上がっています。欧米の感染者や死者は凄まじい数になりましたし、日本もなかなか終息に向かわせることができず苦しみ喘いでいます。2020年に予定されていた東京オリンピックは史上初の延期となり、莫大な経済損失が見積もられています。そんな中でいち早く終息の目処をつけて経済活動を再開した中国が他国から快く思われないのは、実態として当然の成り行きです。否定はできません。

一方で個人レベルでみると、世界への感染拡大の初期段階からそれを申し訳なく思い、他国からの非難の声に深く心を痛めている一般の中国人がたくさんいることは知っておくべきです。ある中国人は日本の友人に「中国のせいでみんなが楽しみにしていた東京オリンピックを延期させるようなことになってしまって本当にごめんなさい」とメッセージを送り、日本でマスクが入手困難になってからは友人たちにマスクを送る活動を続けています。微信や微博でもそういう人の話はたくさん見ます。

そういう人がいることを知っていくうちに、報道だけを見て「中国」のキーワード一つで国や14億の中国人を十把一絡げにして判断することの不毛さが分かります。正しい判断には個人レベル、自分自身の目で正確にみてそれを積み重ねていくことが必要で、そのためにはコミュニケーションが最も重要です。それができないのであれば、ただでさえ面白おかしく視聴者を煽るメディアの報道だけでものごとを判断すべきではありません。メディアの情報は注意深く事実のみを選択して(それすら難しいのが実態ですが)、あくまでも全体を大まかにみるだけの参考情報と位置付けるべきだと思います。

パンデミック時の行動の違い

2020年のCOVIDー19(新型コロナウィルス)では一般的な中国人の特徴がみられたと思います。あくまで一般の日本人との比較ですが、政府の指導もあり、感染を大いに恐れて防護に真剣に取り組む人が多かったです。中にはパニック状態になり極端な行動をとる人もいました。逆に日本人の危機意識が中国人に比べて低いということでもある訳ですが、違いそのものが興味深いと思いました。

報道されていた極端なものは、中国での感染拡大が春節の時期だったことで親族が里帰りするのですが、自宅へ入ることを禁止して追い返すようなケースでした。窓からお年玉を投げ付けて「それを持ってさっさと帰れ!」と。確かに感染防止のためには正しい対策ですがもう少しやり方があるのでは?と思いました。身近な例では、新規感染の拡大がある程度収まって自宅待機命令が解除されても、恐くて家から出られない人が一定数いました。外気を吸ったら感染するのではないかとまで心配されていたそうです。公共の交通機関を使わざるを得ない場合にゴミ袋で身を包んで頭部には水用の容器を被っている人もいました。小区でバリケードをはって外部からの訪問者の入場を阻止する場面もありました。日本や韓国で感染が拡大し始めた時には、日本人韓国人というだけでずっとその街に住んでいて他の都市や国に行っていない人までも恐れられ、近隣の住民が彼らの部屋の扉に監視カメラを取り付けたりしました。

中国人の同僚からは「あなたたち(日本人)が呑気に構えているのが理解できない」と言われました。日本での感染初期、マスクがまだ市場に出回っている2月に、中国人の同僚に「日本の社員はマスクはしているのか?」と聞かれ「3割くらいはしている」と答えると、日本にマスクを送る準備を始めようとされました。マスクが足りないから着けていないのだと勘違いしたのです。当時は日本人は感染のリスクを軽視していてマスクを着けた人も基本的には花粉症対策でした。

日本人が呑気なのは、地震や台風などの自然災害が多く、ある意味場慣れしているからではないかという分析が中国メディアで報道されていました。

コミュニケーションを良化するという目的においては、何故このような違いがあるのか、どちらが良いのか悪いのか、を議論することにはあまり意味はなく、基本的な考え方や行動様式の違いがあるということを理解しておくべきだと思います。

素直に学べないことの不利益

日本と中国の間にはまだまだ偏見や疑念に根差した人心の隔たりがあり、そのために互いの不利益になっていることがたくさんあると思います。中国側は発展していく過程で日本を参考にしたり、買い物目的から始まった日本旅行が盛んになったり、アニメブームなどで若い世代を中心に日本に興味を持つ人が増えたりと、ある程度日本への理解が進んできたと思います。一方の日本側の中国への理解が進んでおらず、これは今や日本にとって非常に不利益な状態だと思っています。

個人的には2020年のコロナウイルスへの対応でそれがよく分かりました。感染拡大防止について、感染が真っ先に拡大した中国の取り組みは良くも悪くも諸外国にとって先行事例でした。人命にかかわることです。成功であろうが失敗であろうが事実としてそれを素直に研究し応用展開すれば命が救えたかもしれません。しかし日本はどうもそういう研究をしているようにはみえず、中国の情報を得ても斜に構えて眺めているだけ。感染者数の隠ぺいとか極端な隔離策とか、日本人にとって「中国ニュースとはかくあるべき」みたいな情報のみを面白おかしく語るだけで、自国の益になるものを学び取ろうという姿勢に欠けていると思います。結果、中国の感染拡大を「中国はダメだなぁ」と評論家然として眺めていた日本は人口比でみると中国以上のパンデミック状態になりました。

中国政府が意図的な報道をすることは多分にあります。しかし程度の差こそあれ、それはどの国にもあります。素直に学ぶ姿勢があれば、情報から意図的な部分を差っ引いて、何か役に立つものを取り入れる筈です。個人の付き合いで考えてみても、仲の良い友人の情報は、たとえその人に誇張癖や隠ぺい癖があったとしても、どこか利になる部分を見出して取り入れる筈です。また、先行したのが中国ではなくアメリカだったらどうでしょう?何でも盲目的に取り込むだろうことは想像に難くありません。

過去に中国に関わっていい思いをしなかった人たちがなかなか認識を変えられないのは、似たような経験をしてきた者としてよく分かります。「だって中国って〇〇でしょ?」をいつまでも払拭できない。しかし、ものすごい勢いで変化を遂げている中国はもはや明かに過去の中国ではありません。人もどんどん変わっています。若い人などは日本の若者よりよっぽど品がよく優秀な人がたくさんいます。それを理解しないと次第に取り残されることになります。

生き残り繁栄していけるのはその時点の富める者でも賢い者でもなく、変化に対応していける者です。中国に対して過去認識はとりあえず置いておいて、現状の事実ベースで理解していくようにすべきです。

外国人への思いやり

2020年のCOVIDー19(新型コロナウィルス)の感染拡大の時に我々外国人は戦々恐々として中国に入国した訳ですが、そんな我々を力強くも温かく受け入れてくれるたくさんの思いやりが嬉しかったです。

まずは中国への移動の機内で衛生管理のスタッフが「あなた達の安全は私たちが責任をもって必ず守る」と力強く宣言してくれました。これは大きな安心を私たちに与えてくれるものでした。ただ、中国語が分からない日本人旅行客が多いフライトでしたので通訳をして頂きたかったです。中国語が分からない我が同僚は意味が分からないので、そのものものしい様子に恐れ慄いていました。

南京政府からは外国人向けの通達が出されました。「あなた方は外国からの大切なお客様です。受け入れと生活安全には万全を期しますが、もし不都合があった場合は遠慮なく申し出て下さい」というような内容でした。

そして何より嬉しかったのが隔離ホテルのスタッフの対応でした。日本からの客だということで食事には特別に寿司や天ぷらを用意してくれたり、連絡用のWECHATのグループチャットには日本語通訳の方を入れてくれました。そして改めて住み心地はどうかと個別にメッセージをくれて、「本来の日本料理ほど美味しくはないでしょうが心遣いのつもりなので受け取って下さい」と。そして清明節には80人ほどいる入居者全員に手書きのメッセージを添えた青団を差し入れてくれました。

中国国内の感染が収まってきて外国で拡大している最中のことでしたので、中国としては外国からの訪問客は率直に言って迷惑だった筈です。(それが経済活動に必要なことだったにせよ一時的には)それにも関わらず思いやりをもってじっかり受け入れてくれて大変感謝しました。私の同僚は中国語があまりできませんが、ホテルのスタッフになんとか感謝の意を伝えたいと、下手な中国語で感謝のメッセージを部屋に残し、後日ホテルから感謝の意が伝えられるなど、心温まる話もありました。

差別は続くよ、どこまでも

2020年のCOVIDー19(新型コロナウィルス)は世界中の人々を疑心暗鬼に陥れた訳ですが、発生した場所、感染が拡大していった場所に応じて差別意識も拡大していく様子がきれいごとではない人間の本質を表していると思いました。コロナが発生した武漢の人を他都市の中国人が、中国人を日本人が、東アジア人を欧米人が、一周回って中国人が外国人を差別した経緯です。

武漢の人を他都市の中国人が差別した様子は報道で見ましたが、(背景は分からないのですが)武漢人だというだけで長い棒で叩いたり石を投げたりして排斥しようとする様子に戦慄を覚えました。その後日本では国内にいる中国人に中国人だというだけで危険視し差別する言動が頻発しました。その後欧米では東アジア人だというだけで差別をし、社会活動に東アジア人だけ参加させないという現象が発生しました。当時アメリカにいた知人が実体験として語ったところによると、「もともとマスクをする習慣がないアメリカでは東アジア人がマスクをしているのを見ると感染者だと誤認し差別を受けるので、恐ろしくてマスクを着けることができない」ということでした。実際、マスクをした中国人が地下鉄で暴力を振るわれたという話がありました。そして国内で感染が収まった中国人による外国人への差別。一般住民レベルでは排斥活動がありました。

地域性とか国民性とか特徴はあるのでしょうが、生身の人間の本性というのはどの国の人も同じようなものだと再認識した出来事でした。民族排斥や集団暴行につながらなかっただけ人間は成長したといえるのかもしれません。互いに相手を知らないことが過度な警戒心を生んで排他的な言動に繋がります。コミュニケーションにより分かり合うことがいかに大切か、考えさせられました。

トップダウンでの徹底した対策

2020年のCOVIDー19(新型コロナウィルス)の発生国の中国は、政府主導で徹底した感染拡大防止の対策がとられました。数字の精度に疑問があるという話もありましたが趨勢として約2か月(1−3月)で感染拡大抑制に成功しました。

感染拡大の傾向がみられ始めた1月中旬から即時実施したのが、企業や学校の休止措置、自宅待機、都市の封鎖、都市間の移動停止でした。市民生活においてもマスク着用の義務付け、自宅待機(外出禁止)。そして必要な医療施設を建設し感染者の隔離と治療に専念しました。これを徹底して継続しました。

経済活動は新規感染者が一定期間ゼロを維持できた段階から地方政府の責任で再開することを認めました。感染者を出したら自治体の責任者はクビなので必死です。会社ごとに感染者の有無、感染防止のルールとマスクや消毒液の備蓄の状況を確認の上、政府が承認したら営業を再開できる方策が採られました。

3月に入って国内の感染が一段落してからは外国からの逆輸入への対策です。入国者の14日間完全隔離での経過観察。私も経験しましたが、移動の機内でスタッフが「あなた達の安全は私たちが責任をもって必ず守る」と力強く宣言した後、機内での検温などの体調チェック、空港での問診、隔離ホテルへの送迎、隔離ホテルでの健康管理(PCR検査2回、血液検査1回、毎日2回の検温)と食事提供(ただし宿泊と食事の費用は自費)、そして無感染が確認できたものは証明のQRコードを取得させて、市内小区への入場に使用。

その後は外国人の入国を禁止しました。

4/4の清明節では国を挙げてコロナで亡くなった方への追悼を行ないました。10時から3分間の黙祷と警報。特に治療にあたって亡くなられた医療従事者が英雄として追悼されました。

共産党一党独裁には賛否両論がありますが、迅速に判断して対策を徹底するという意味では、このトップダウンの体制は非常に有効に機能したと思います。感染拡大がダラダラ続いた他国と比較するとよく分かります。

2020年 衛生観念の劇的な向上

2020年のCOVIDー19(新型コロナウィルス)は世界中に災厄をもたらし社会を大きく変化させましたが、中国でも多くの変化がありました。中でも私が一番素晴らしいと感じたのが衛生観念の向上です。目に見える変化として路端のゴミや汚物が一掃されました。

コロナ以前でも上海や大連などきれいな都市はありましたが、私の住む南京では小さな通りに入るとポイ捨てされたゴミや飲食店で客が残した汁などが路端に捨てられて異臭を放っていました。暑くて臭いが拡散する日には息を止めてそそくさと通り過ぎていたものです。

それがコロナを機になくなりました。コロナ対策で2ヶ月間帰国していた私は南京に戻って見たこの変化に大変驚きました。以前のように目を背けて息を止めて通り過ぎようとしたのですが、なんとなく違和感を覚えて路端を見るとゴミや汚物がなかったのです。ひょっとして掃除した直後かも?と思って後日行ってみてもやはりきれいでした。中国で何年も汚い光景と異臭に悩まされてきた私には驚きと共にとても嬉しい変化でした。

中国はまた一つ大きな進化を遂げたなぁと感慨深いものがありました。

非常時の言語能力の重要性

2020年の新型コロナウィルスの感染防止の対応で言語能力の重要性を痛感しました。当たり前ですが非常時には言語能力が必須です。

先ずは何が起こっているのか理解すること。私は外務省の安全連絡をメールでもらうようにしていますが、その情報はどうしても最大公約数的に大きくまとめた内容ですしタイミングが遅いです。知人と話をしたりローカルメディアで情報を得たりと実態情報をリアルタイムで知るのが最も有効です。

そしてどうすべきか理解すること。リスクがどんなものでどんな防護策を採るべきなのか、フライトがいつ減便されるのか等々、言語ができるとリアルタイムで情報が得られて最善の対応ができます。

また、様々な規制に適確に対応すること。空港や隔離ホテルでの特別対応ではどういうことがあるのか、配られる書類に何をどう記入すれば良いのか、問診では何を聞かれどう答えるべきなのか。先方も英語を使ったり通訳を用意したり翻訳機を使ったりしてくれますが間に合いません。私は同僚の通訳をして大いに感謝されました。

最後に、自分を守ってくれる人に感謝の意を述べられること。私は隔離生活でホテルのスタッフに大変良くして頂きました。文書で、チャットで、感染防止のためにごく僅かですが直接の会話でコミュニケーションできたことは、相手に感謝を伝えられるだけでなく、温かい心遣いを直接感じられることで自分の精神衛生上も有効でした。

当たり前のことですが、現地の言葉を理解できるに越したことはない訳ですが、非常時にはそれが生死を分けることにもなりかねないということを実感した次第です。これを機に更に真摯に中国語学習に取り組もうと決意を新たにしました。

皆さんも頑張りましょう。