フィンテックが発展した中国では微信(WeChat )でいろいろな取引ができて大変便利です。しかしその中に私が恐怖を覚える機能があります。お年玉(紅包)の配布機能です。グループチャットを作ってそこに提供者がお金を投じるとランダムな割合で分割されてそれをグループメンバーが受け取っていく仕組みです。クジ的な要素もあり大いに盛り上がります。
困るのは宴会の場でこれが多用されることです。ただでさえ中国の贈り物の文化では大きなお金が動きます。現金取引の頃には我々外国人はその慣習の中になんとなく入れず(入らず)出費はあまりなかったのですが、微信のこの機能のおかげ(せい)で外国人でも簡単に参加できるようになりました。年末の宴会はいろんなグループ単位で何度もあり、その度にリーダーやアドバイザーの立場の我々は大金をむしり取られます。しかも飲み会の場で始まった際にはみんな酔っ払っているしクジで配分が少なかった人は次こそはと期待するので、大いに(無駄に)盛り上がって「谢谢老板!」のおだて声で何度も何度も繰り返されます。そうやって我々はお年玉貧乏になってしまうのです。
もちろん愚痴であり冗談です。僅かな(涙)お金でチームメンバーと交流が深められてとても良いことだと思っています。そう思ってはいますが、年末、春雪前になると携帯が壊れないかなと密かに期待してしまう外国人は私だけではない筈です。
三現主義とは「現場」「現物」「現実」の3つの「現」を重視し、机上ではなく、実際に現場で現物を観察して、現実を認識した上で問題の解決を図らなければならないという考え方のことです。特に製造業などで重視される考え方です。90年代の中国では高学歴のホワイトカラーはエリート意識が強くて工場に出るようなことは自分の仕事ではないとの意識の方がほとんどでした。今でも日本人には中国人の管理職は現場に出向かないと考えている人が多いと思いますが、近年変わってきているので認識しておいた方が良いと思います。
私がお会いした人にも現場を大切にする素晴らしい管理職の方々がいました。課題認識や問題解決にあたっては部下に必ず現場を確認させて報告させると共に、自らもしばしば現場に足を運んで現物を確認し、実際に取り組んでいる担当者の話を聞き、判断をしていました。現場を大切にするというのは日本の製造業の優位性のように言われることが多いですが、日本人以上の中国人管理者は既にたくさんいます。ただ、彼らに会ったのは2010年代です。話をすると彼らも以前は現場に出ず机上で仕事をするのを良しとしていたそうですが、それでは限界があることを悟り、日本のやり方も参考にして現場に出るようになったそうです。リーン生産など理論は分かっていてもまだまだ十分に導入できずもがいている部分はありますが、その重要性は十分に認識されているので、中国の工場の生産性が上がっていくのは間違いないと思います。
更に中国はいろんな領域で科学技術が日本を凌駕しつつあります。それが三現主義をベースに寸化していくと、更に大きな発展を遂げることになると思います。日本も良きライバルとして共創していきたいものだと思います。
中国の企業の意思決定はトップダウン、或いはトップの了解を得たものがほとんどだといえます。会社にもよるとは思いますが比較的大きな会社でも意思決定の権限は上位層に集中しています。或いは明確に決められておらず全てが自動的にトップに上程される会社も多いです。これにはもちろんメリット・デメリットがあり、大胆で迅速な意思決定が可能で特にトップが有能だと素晴らしく機能します。90年代からの中国の急速な発展はこれに支えられたといっても過言ではないと思います。反面、トップが誤った判断をするととんでもない大失敗に繋がることがあります。また、内部では全員が判断をトップに委ねるのでそれぞれの思考が停止し(事実説明をしたら後はトップが判断するという姿勢)、ボトムアップの提案が出難く人材が育ちません。このメリット・デメリットを上手く利用したマネジメントをする必要があります。
それには、目的ベースでワークレベルの提案をしっかり考え、日常のコミュニケーションでそれをトップに上手く伝えて合意を形成しておく必要があります。簡単にいえば「リーダーを味方に付ける」ということです。日本の会社よりも日常のリーダーとのコミュニケーションが重要になるので日本人は意識的にやる必要があると思います。
注意点はトップとの合意形成の一方、中間の関係者の理解を得ておくことです。どうせ決めるのはトップだからと、トップだけとコミュニケーションして中間の関係者の意思に反するような提案を通してしまうと実務を担当している人のメンツを潰してしまい、協力が得られないばかりか反発を生むことにもなりかねません。組織の形態を把握して関連部門の合意を得た上で(合意に至れなくても相談はした上で)トップとのコミュニケーションを進める必要があります。
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