外国に住んでいるとその国が嫌いになる波が定期的にやってくるものです。特に中国の場合は、まだまだマナーが悪かったり自己中心的な言動に遭遇するなど、日本人からみるとイライラしたりゲンナリしたりすることが多いので、比較的大きな波となってやってきます。私の場合は、中国赴任当初はだいたい3ヶ月毎に来ていましたが、最近では6ヶ月毎くらいに周期が長くなってきました。その波が通り過ぎると今度は手のひらを返したように好意的になったりします。この波に合わせた学習のメリハリが必要だと思います。
嫌気の大波が来た時に無理に中国語の勉強をしてもはかどる筈がなく、返って嫌気を倍増させる結果になります。せっかく学習を重ねてきた中国語が「見るのも嫌!」ということになってしまうのはもったいないので、この時期は思い切って学習をストップすべきと思います。大波に逆らわず、中国関連のものにできるだけ触れないようにして気分を変え、なるべく早く大波を去らせるのが得策です。大波さえ去ってしまえば、モチベーションは復活します。
そのためには自分を客観視することが重要です。私の場合は兆しは食の好みの変化に現れます。普段好きな烤羊肉串や重庆火锅、兰州拉面、白酒などに嫌気がさしてきて日本食が恋しくなってきたらたらすぐに生活パターンを変えます。人によって違うと思いますが「なんとなく疲れたな、嫌だな。」と感じ始めたら、気分転換に入るべきだと思います。中には無理をし続けて精神のバランスを崩してしまう方もいらっしゃいます。真面目でひたむきな人ほどそういう事態に陥りがちです。好き嫌いの波は誰にでも、どんなものに対してもありますので、時には肩の力を抜いてやり過ごすように工夫しましょう。
語学というのはスポーツと同じで、正しい方法を学んだら後は繰り返し練習することが大切だと思っています。繰り返し練習するのにもコツが必要で、淡々と継続することも大切ですが、時には集中的な取り組みをすることで、学習効果が高まると思います。スポーツでは日々の練習に加えて、定期的に特別練習や合宿を行って能力を高めます。同じように中国語学習でも、集中週間を設定することをお勧めします。
集中週間で実施したいことは2つあります。一つ目は基本や疑問点の見直しです。学習を進めていると、基本ができていないうちに、あるいは理解が不十分なまま何となく流して進めてしまうことがあります。所謂「やりっ放し」で後からは聞けない状態になってしまっているものです。それを集中週間にまとめて見直して習得します。ポイントは日頃の学習の中で気付く理解不足や曖昧なものを、後で見直せば分かるようにチェックしておくことです。復習ノートの作成、活用が重要です。
二つ目は、期間中は中国語にどっぷり浸かることです。一時的に学習の負荷を高めて一段上のレベルへの飛躍を図ります。ただしここでは新しい知識を習得するのではなく、既存の知識をフル活用して読み書きや会話をして、知識を体得&定着させるのです。その期間はできるだけ日本語を使うのを避けて、中国語のみにします。期間は長くなくても、集中できさえすれば数日でもかまいません。メリハリを付けることで学習を加速させます。
これらの方法で知識をブラッシュアップすると、分かる感/できる感が高まって、その達成感が新たなモチベーションにも繋がります。中国関係の行事がある日や中国人の知人に会う日などを利用して、集中期間を設定してみてはいかがでしょうか?
私くらいの中級レベルの人は、中国語の長い文章を読んでいると知らない単語や言い回しが出てくる度に詰まってしまい、それを調べたりしているうちに疲れてしまって、読むのをやめてしまったりします。私は長編の「三体」で挫折した経験があります。「三体」は中国で大ヒットしたサイエンスフィクションで、とても面白くて話にグイグイ引き込まれていきます。しかし面白い分難解な言い回しや専門用語が多く、度々詰まってしまいます。その度に調べていましたが疲れてしまって挫折、長期間放置した末にあらすじだけは知りたいと思い、最終的には斜め読みして終えたことにしました。
他にも数年前に着手して未だに完読できていない本があります。一旦中断してしまうと読む気が失せてしまうもので、最近では手に取ることもしなくなっています。
しかし、とにかく一度は長編を中国語で読破したいという思いがあるので、再度一念発起して「流浪地球」を読み始めました。「三体」と同じ作者が書いた作品で、映画化されて大ヒットしました。私は映画を見ていないので、映画の楽しみを最大化するために、事前に本でしっかりと理解することを目標にしています。これまでの反省から、違うアプローチをとることにしました。知らない言葉が出てきてもいちいち調べることはせず、放置して読み進めることにしました。そうすると、分からない部分がありながらも大意が掴めるので、次第にストーリーに引き込まれて、数時間没頭して読めるようになりました。そして分からない言葉は何度も出てくるものが多く、いろんな文章で見る度に前後の文脈から何となく意味が推測できてきます。そしてある程度読み進めたところで、戻って分からなかった言葉を調べると、推測してきたこともあってはっきり理解できることが多いです。後から謎解きをするような面白さも感じます。
このアプローチは私には非常に有効です。なんと言っても没頭して読み続けられるという、読書本来の楽しさを味わえることがいいです。楽しく読み進めている間は読むスピードや理解がだんだん速まることを実感しています。楽しめることが前提なので、ポイントはやはり自分が好きなジャンルの本を見付けることです。
英語学習の広告でよく見聞きするスピードラーニング、「赤ちゃんは最初は分からなくても音のシャワーを浴びているうちに次第に理解し、話せるようになる。それと同じプロセスで、大量の文章を聞き流しているだけで分かるようになってくる」というやり方です。体験談で「分からなくても気にせずとにかく聞き流していた。しばらく経ったある日、電車の中で話している外国人の英語が突然すっと入ってくるようになって驚いた。それからはただの音でしかなかった英語が意味あるものとして聞こえるようになった」などの大変羨ましい話を聞きます。そこで私も中国語でやってみようと思い立ち、テキストに付いているCDの音声を録音して携帯で聞き続けてみました。聞き流しのみでの効果を確かめるために、あえて全く目を通していないテキストを使いました。結果ですが、1ヶ月ほどやってみましたが全然聞き取れるようになりませんでした。単なる音として耳を流れていっただけで、記憶にも印象にも何も残りませんでした。
考えてみれば、赤ちゃんは実際にはただ聞き流しているのではなく、両親や祖父母が四六時中一緒にいて何度も繰り返して教えています。聞き流しているだけで分かるようになるのではなく、聞くことと教えてもらうことの反復で理解していくのだと思います。また、赤ちゃんは全ての集中力と好奇心を持って、聞こえてくる音を全力で理解しようとしているはずです。対して私の場合は、BGMや念仏のように本当に聞き流しているだけで集中力も好奇心もなく、そのうち聞いていることすらも忘れてしまい、音が途切れたらハッと流していたことに気付くようなありさまでした。そんなありさまだったので分かるようになる方が不思議です。
1ヶ月では短か過ぎたのかもしれませんし、私の頭が固いからなのかもしれませんが、とにかく事実として効果ゼロでした。市販のスピードラーニングの教材には、中国語と日本語を交互に流す等のさまさまな工夫がなされているのだろうと思いますが、少なくとも中国語を本当に「聞き流すだけ」では全く意味がないことが分かりました。
私は3回目の中国赴任に際して、中国語オンリーで仕事をしてみようと考えました。目的は自身の中国語力を強化すること、そして中国人の同僚とのコミュニケーションを良くすることです。前回から約一年半のブランクを経ての赴任でしたが、それなりに長い間勉強してきたのだからまあ大丈夫だろうと楽観的に考えて、赴任早々「中国語オンリーで仕事をする!」と周囲に宣言しました。導入教育として半日ほど就業規則や業務上の様々なルールを中国語で説明してもらったのですが、これがなんと自分でも驚くほど良く分かったのです。すっかり気を良くした私は、本格的に中国語オンリー宣言をして翌日からの業務に臨みました。しかし導入教育の時と違ってどうもよく分からない。耳が慣れてないからか?と思ってしばらく続けていたのですが、一向に聞き取れるようにならない。そこでふと気が付いたのです。導入教育の内容は前回の赴任時に聞いたものとほぼ同じだったということに。内容が記憶の片隅に残っているから、聞き取れたのでなく、思い出しただけだったのです。これはヤバイと思って、周囲に「中国語オンリー宣言は取り消す」と言っても、みんなニヤニヤして「初志貫徹で頑張ってね」ととりあってくれません。そしていろんな問題に悩まされるようになりました。
まず、通訳さんが来てくれなりました。当社では通訳専門のチームがあり、申請すれば打ち合わせの場に来てくれるのですが、中国語オンリー宣言をしてからというもの、私が頼んだら笑って来てくれない、同僚は私のためには通訳を頼んでくれない、という状況になってしまいました。また、同僚が容赦なく中国語で話すようになりました。中国語オンリーだと宣言したのだから当たり前なのですが、以前は直接話をするにしても英語を交えてくれたり、中国語ならゆっくりと簡単な用語を選んで話してくれたりしていたのですが、宣言の後は容赦なく中国語だけでネイティブ同士の会話と同じノリでペラペラ話してくれます。もちろん半分以上分かりません。言われることが理解できなくて、曖昧な受け応えをしたり答えられなかったりしたら「明確に否定しなかったから合意」などと都合よく解釈されたりします。仕事上の軽い会話なら良いのですが、重要な案件だと重大な問題につながります。実際に何度か痛い目にあいました。ある時は、仕事の付き合いがある中系サプライヤーが日本のとある会社に「○○社の○○さん(私)の推薦で御社と提携することを検討しているので近々貴社を訪問したい」と身に覚えがない連絡をされてしまい、その収拾に一悶着ありました。そんな経験をしましたので、重要な案件の時だけは頭を下げて通訳さんをお願いすることにしました。
中国語力が向上したかと言われると、毎日中国語のシャワーを浴びているので、最近になって聞き取れることが増えてきたように思います。話す方はほとんど進歩していません。ただ、もう一つの目的のコミュニケーションについては、無謀な試みと下手な中国語がウケてすっかり人気者になりました。下手でも話そうと頑張る姿を好ましく思ってくれているようです。今後も任期一杯、頑張って続けてみます。
中国語の学習にはいろんなやり方があります。最も一般的な学校で習うことについて、メリットやデメリット、教育スタイルの比較について紹介します。
『教えてもらうか独学するか』:拼音の項で述べましたが、私は少なくとも初心者のうちは独学は控え、有識者に正確に教えてもらうべきだと考えています。特に発音が難しい中国語では、間違った発音を覚えてしまうと二度と正しい発音ができなくなるというリスクが高いです。実際にそれで中国語を断念した知人が数人いるだけに、私としてはここは確信を持ってコメントしておきます。また、独学では自分のペースで学習できるのに対して、教えてもらう場合は学校や先生の都合に合わせる必要があるので、時間や内容調整の融通が効き難いという難点があります。そのため、時間の確保が難しい兼業学習者には独学が良さそうに思えますが、一方で仕事や他の用事に流されてしまいがちなので、ある程度の外部からの強制力が働いている方が継続には有効だという考え方もあります。事実、私は中国語学習のモチベーションが同僚たちに比べて高い方ではありますが、学校に行っていない時には気が付くと仕事ばかりになって学習を疎かにしてしまっていることが良くあります。また、教えてもらうにはもちろん費用がかかりますが、お金を払うことで性根が入って真剣に取り組めるということもあります。これらの考えから、私は独学よりも教えてもらう方が良いと考えます。
『プライベートかグループか』:一般に中国語学校ではプライベートレッスンが多いのではないかと思います。一方、大学や団体が主催する交流会などではグループレッスンが主体です。プライベートレッスンの魅力はカスタマイズが可能であること、個人の能力や希望に沿った教え方をしてくれることです。詰まっても、周囲を気にすることなく自分が理解できるまでとことん聞くことができます。グループレッスンは個人の都合で進められないかわりに、学習の仲間がたくさんいて切磋琢磨できるのが大きな魅力です。他の人の発言や質問を聞いて自分では思い付かなかった気付きを得られたり、相互に教え合ったりできます。競争心が芽生えて、それがモチベーションに繋がります。そして何より、仲間意識が芽生えて学習に取り組むのが楽しくなります。どちらが良いかと一概には言えないですし人によって好みはあると思いますが、あえて言うなら学習初期はプライベートでじっくりと、中期以降は引き続きプライベートか、楽しい人間関係が見込めるならグループを視野に入れるのが良いかと思います。私はこれまでほとんどプラベートで教えてもらってきましたが、大学で学んでいる知人の話を聞くととても楽しそうなので、いつかは大学で学んでみたいと思います。
『通うか来てもらうか』:学校に通うか家庭教師に来てもらうかという比較です。学校に行くとホワイトボードや教材が完備しているのに対して、一般の家にはそれらがありません。私はホワイトボードに先生も自分も書きながら授業をしてもらうのが好きなので、通う方が好きです。家庭教師に来てもらうのは移動時間のロスがないので有難いのですが、どうしても授業の質は落ちると思います。生活環境の中では気持ちがダラけてしまうということもあります。ある時期に先生の派遣をお願いしたことがあるのですが、先生(女性)がOK だというので待っていると、当日に「彼氏にダメと言われた」とドタキャンされたということもありました。
『Face to Faceかネットか』:ネットのオンラインスクールで勉強したことはないのですが、以前学校で教えてもらっていた先生に中国と日本を繋いでスカイプで授業をしてもらったことはあるので、その経験を踏まえて比較します。ネットだと通う必要がないので時間的に有利です。ただ、「痒いところに手が届く」授業は難しかったです。例えば書いて説明してもらうような場合は記述欄に文章をインプットしてもらうのですが、その文章を指で示して説明するようなことはできないので意思の疎通が難しかったです。また、絵を描きながら説明することが意外と多いのですが、それもやり難かったです。他にも宿題の答え合せや細かい部分の発音練習など、うまくできないことが多かったです。たぶん専門のオンラインスクールではそのような課題は対策しているのだろうと思います。中国生活を終えて帰国してから学習を続ける際には検討してみようと思っています。
中国語の文章を読む時に苦労するのが外来語の中国語表記です。特に欧米人の名前は難解でなぞなぞのように感じます。読む時だけでなく聞いてもよく分からないものが多いです。HSKの試験にもよく出てきます。HSKは世界中の人々が受験するので、典型的な名前のアメリカ人がよく登場するからです。
何か良い覚え方はないものかと成り立ちや法則を調べてみました。漢字による音訳、つまり表音表記が原則で、その場その場で適当に表記するのではなく、用いる漢字がほぼ決まっているそうです。新語の場合はメディアなどで使われ出したものが浸透していくイメージですが、一般には新華社通信の表記に従う例が多いそうです。また、「可口可乐」(コカコーラ)などの商標は、各企業が字義の好ましいものや商品イメージに近い漢字を定めて使用することが多いようです。ネットで調べたら英語仮名に対応する漢字のリストがあるにはありましたが、標準化されているとはいえかなりの数なので、これを覚えるのは大変だと思います。我々学習者は新語を作る側ではなく学ぶ側の人間なので、既存の一般的な言葉を覚えていくだけでいいと思います。以下に一般的な名前の漢字記述を紹介しておきます。これくらい覚えておけば少なくともHSKで困ることはないと思います。
●男性名: 『迈克尔(Màikè’ěr)マイケル(MICHAEL)』 『约翰(Yuēhàn)ジョン(JOHN)』 『詹姆斯(Zhānmǔsī)ジェームズ(JAMES)』 『罗伯特(Luōbótè)ロバート(ROBERT)』 『威廉(Wēilián)ウィリアム(WILLIAM)』 『大卫(Dàwèi )デイビッド(DAVID)』 『理查德(Lǐchádé)リチャード(RICHARD)』 『查尔斯(Chá’ěrsī)チャールズ(CHARLES)』 『约瑟夫(Yuēsèfū)ジョゼフ(JOSEPH)』 『托马斯(Tuōmǎsī)トーマス(THOMAS)』
●女性名: 『玛丽(Mǎlì)メアリー(MARY)』 『海伦(Hǎilún)ヘレン(HELLEN)』 『安娜(Ānnà)アンナ(ANNA)』 『伊丽莎白(Yīlìshābái)エリザベス(ELIZABETH)』 『詹尼弗(Zhānnífú)ジェニファー(JENNIFER)』 『艾米丽(Aimili)エミリー(EMILY)』 『琳达(Líndá)リンダ(LINDA)』 『玛格丽特(Mǎgélìtè)マーガレット(MARGARET)』 『帕特丽夏(Pàtèlìxià)パトリシア(PATRICIA)』
ここまで書いて改めて読みかけの大ヒット作「流浪地球」を見てみると、これら以外の名前がバンバン出てきます。やはりそう簡単には対策できそうにありません。中国人の知人からは「最初の2文字だけ覚えれば大丈夫」とアドバイスをもらいました。
あとは国名、都市名も覚える必要があります。こちらはネットで検索するといくらでも出てくるので、自分で一覧表を作って覚えるといいと思います。国名については、中国在住でスポーツ観戦が好きな人なら、テレビのスポーツチャンネルでサッカーやバレーボール、テニスなどの国際大会が頻繁に放映されるので、それを意識的に眺めていると結構覚えられます。
学習というより修行、訓練です。旅に出るといろんなアクシデントに見舞われますが、それを独力で乗り越えることで達成感と中国語力への自信をつける方法です。ガイドや他人に依存する団体旅行ではダメ、あくまで一人旅です。中国旅行では(以前に比べてずいぶん減りはしましたが)愉快なアクシデントが次から次へと発生します。チケットの購入場所が分からない、行っても買い方が分からない、聞いても言葉が分からず(方言もあって)あるいは説明が不親切で分からない、間違ったチケットを握らされる、ホテルの予約が入っていない/勝手にキャンセルされている、地図や時刻表がデタラメ、頼んだ迎えが来ない、白タクにボラれる/タクシーに違う所に連れて行かれる等々、最初は憤っていてもあまりにたくさん発生するので最後には笑ってしまいます。私は他の国でも仕事をしてきましたが、こんなにデタラメな(だった?)のは中国だけです。そのデタラメをチャンスととらえて、持ち前の中国語力を駆使して解決していくことで自信を深めるのです。
私の体験談を一つ紹介します。東北の街長春から夜行列車で天津に行こうとしていた時のことです。チケットの出発駅の記述の横に何やら書いてあるので店員さんに確認したのですが「出発は長春駅」としか言いませんでした。当日の夜に長春駅に行って待合室で待っていましたが、いつまで経っても乗る便の表示が出ない。嫌な予感がして駅員さんに聞いてみると、工事中か何かの理由で長春駅は長春駅でも数キロ離れた場所にある臨時のプラットフォームから出るのだということでした。その時点で既に出発30分前、もうダメかと思いましたがとにかく急いで外に出て、たむろしていたバイクタクシーのおじさんをつかまえて行き先を告げました。「ちょっと無理すれば間に合うかもしれないがどうする?」と言うので「頼む!」と飛び乗りました。おじさんは雪が半分溶けた泥道を信号無視、歩道走行、私有地横断などの「ちょっと無理」なテクニックをフルに使って疾走して、タクシーで20分くらいかかるところを10分弱で着けてくれました。私はおじさんに「お釣りは要らない、ありがとう!」と札束を押し付けてプラットフォームに走っていきました。それがとんでもなく長い列車です。とりあえず近くの車両に乗り込んで列車内を移動しようとしましたがダメだと言われて、指定席の車両まで必死で走りました。そしてギリギリ間に合った、という話です。まだ中国語の学習を始めて一年くらいの頃だったのですが、駅員さんとのやり取り、バイクタクシーのおじさんとのやり取り等々で窮地を脱したことに達成感と自信を覚えました。すっかり気を良くした私は、「ベッドを代わってくれないか」とやって来た大学生くらいのお嬢さんたちの依頼にも中国語でスラスラ応じました。お嬢さんたちは私の発音に怪訝な顔をして「你是上海人吗?」と聞いてきました。発音が変だと思われたからですけど、「外国人か?」ではなく「上海人か?」と言われたのがなんとなく嬉しかったものです。また、夜行列車では途中停車駅に泊まった時にトイレに行こうとしたら「ダメダメ、外でしろ」と言われました。当時の寝台列車のトイレは下が開いていてブツを線路に落とす方式だったので、停車駅でみんながするとそこだけ山盛りになってしまうからです。また、これは私が悪いのですが、三段ベッドの一番上で焼酎を飲んでいて隙間から瓶を落っことしてしまって、冷や汗をかいたりしました。下のおじさんに直撃はしなかったようで、丁寧におわびを言って許してもらいました。
このような体験をして無事帰還すると、中国語学習者として一回り大きくなった気がしたものです。しかし、考えてみるとこれは度胸がついたというだけで、言語能力の向上には習得には大した役には立っていないですね。
記憶を定着させるには定期的に復習することが不可欠です。せっかく覚えたのに忘れてしまって再度覚え直すほど無駄なことはありません。兼業学習者にそんな時間の余裕はありません。一度覚えたら二度と忘れない!気合と工夫が必要です。気合の方は各自のモチベーションで喚起するしかないので、工夫について考えてみたいと思います。ポイントは内容と周期です。
まず内容ですが、全部を確認しようとすると大仕事になってしまって続きませんので、絞り込むことが必要です。「独自のノートを作る」の項で紹介した通り、自分にとって「これは重要だ」とか「理解できていない」「どうも覚え難い」というものに限定してノートを作り、それを定期的に見返します。時点時点で習得できていないものを絞り込んで、ポイントに集中することで効率的に習得していきます。
次に周期ですが、毎日長時間やるのはなかなか大変です。一方、時間を開け過ぎて大部分を忘れてしまったら思い出すのが至難の技になります。忘却の彼方に消えてしまう前にこまめに復習するのが一番です。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの「忘却曲線」によると、人が学んだ時に忘れる割合は、20分後に42%、1時間後に56%、9時間後に64%、1日後に67%、2日後に72%、6日後は75%、31日後は79%だそうです。学んだ直後から物忘れが始まり、最初は一気に、次第にゆっくりと忘れます。一方、記憶するのに適切な周期と時間ですが、まず、学習した後24時間以内に10分間の復習をすると、記憶率は100%に戻ります。そして、次回の復習は1週間以内に5分やれば記憶がよみがえります。そして、次は1か月以内に2~4分復習すれば記憶は復活します。しかも、何度かに分けて勉強することで、長期的な記憶にも繋がります。つまりベストな復習のタイミングは、「1日以内に10分、1週間以内に5分、1か月以内に2~4分」の3回です。これだけなら負担にもならず気軽に続けられます。上手く取り入れて成果を上げましょう。
あと私のように歳をとってくると記憶力を保つ努力をしなければなりません。一般的には方法は三つあるそうです。まずは「よく運動すること」で、脳に血液を送ることが記憶の保持に効果的だそうです。次に「よく食べること」です。脳を正しく機能させるためには脳に栄養を行き渡らせる必要があるそうです。最後に「脳のトレーニングを行うこと」で、常に新しいことにチャレンジすることが記憶の保持に効果的だそうです。
楽をして最大の効果が得られるように工夫しましょう。
基本的なことですが、知識を定着させるためにノートを作ることをお勧めします。私自身が紹介できるような優れたノートを作っている訳ではないのですが、勉強に割ける時間が限られている兼業学習者に参考になりそうな工夫を紹介します。それは、自分のウィークポイントに特化したノートを作ることです。
兼業学習者のノートに求められる要件は、気軽に何度も見返せて、習得すべきことが明確になっていることだと思います。私の場合は、学習初期にはノートを作る作業そのものに注力して、美しいノート、つまり整った構成で網羅的にきれいな字で書けたらそれで満足していました。しかしこういうノートは得てして見返されません。まず大量にあるので見る気になれません。そしてどこに何を書いたのかすら覚えていません。一番いけないのが、たくさんノートを作ったらたくさん勉強したような気になって、それに満足して学習を終えてしまうことです。考えてみたら要点をまとめた資料という意味では、市販の教材の方がずっと洗練されて要領を得ている筈なので、同じまとめ作業を自ら行うのは、自分で書くことによって印象付けるということ以外には効果はありません。
そこでお勧めするのが、自分のウィークポイントに特化したノートの作成です。きれいにまとまった資料は市販のものに任せて、自分自身に必要なものに限定したノートにします。「限定」の基準が人によりけりだと思いますが、私の場合は一度見聞きしたものは一旦全てメモって、その中で「これは重要だ」とか「理解できていない」「どうも覚え難い」というものをノートに整理して書いていきます。そしてノートに記述したものも学習が進むにつれて習得していくので、習得したと確信したものにはマーカーで習得済み印と日付けを付けていきます。もちろん一旦習得したと思っても忘れることがあるので、マーカー印部分は定期的にざっと眺めます。そのようにして時点時点で習得できていないものを絞り込んで、やるべきポイントに集中することで効率的に習得していきます。
手軽に取り出して眺めることができるように、ハード面の工夫も必要です。コンパクトでいつでもどこでも簡単に取り出して見られるものが理想です。私はデジタル世代とはいえない年代なので、正直言って手書きの方が愛着があってしっかり理解できます。ただ、手書きのノートは持ち歩きに不便なので、写真に撮ってスマホで眺めるやり方をしています。たぶんそんなことをしなくても、効率的でスマートなアプリがあるのだろうと思います。ご存知の方は紹介して下されば助かります。
HSK6級の合格点レベルに達した同僚がこれをやっていました。出勤車の中でも散歩中でも目に付いた文章や単語を片っ端からノートに書いていき、それを口に出してブツブツつぶやき続けるのです。彼は徹底していて、人と会話をする時以外はずっとではないかと思うくらい延々と、そして結構大きな声でブツブツ言っていました。また、会話をしたらネイティブが言った言葉をメモしてブツブツ繰り返していました。私はどちらかというと多くの日本人と同じく「読む書く」から勉強していったクチですが、彼は「聞く話す」から取り組みました。元々日本語でもマシンガンのように早口で大量の言葉を発信する人なので、「聞く話す」の方が得意で好きなのでしょう。そのため、仕事でのコミュニケーションを中国語オンリーでやり出したのは私よりずっと早かったです。口に出して耳で聞くというのはやはり記憶の定着に効果があるのだと思います。ただ、流暢に話しているのに漢字は知らないという言葉も多く、「『怎么样』ってそんなふうに書くんだね。知らなかった」などと言って周囲を驚かせたりしていました。
このようにかなり効果が期待できるつぶやき戦法ですが、彼と同じレベルでやるのはなかなか難しいかもしれません。四六時中大きな声でブツブツ言うのはやはり異様ですし、それを他人に聞かれるのは少々恥ずかしいです。彼は周囲にどう思われようが全く気にしない人でしたが、私には正直抵抗があるなと思いました。小さな声で記憶に残したい言葉だけでも良いと思います。ちょっと口に出してみるだけでも効果が期待できると思います。
昔の中国人の「失敗は他人のせい」というロジック、というか屁理屈には眼を見張るものがありました。「成功は自分のおかげ」までは言わないにしても、面子のためなのか失敗を認めたら良からぬ処罰がなされてしまうからなのか、とにかく自分の失敗は認めない。これにはとても困惑させられました。
そもそも彼らは非常に安易にものごとを引き受けます。そんな能力はないと思われるのに大して考えもせず「没问题」「可以的」と引き受けます。できるという根拠を聞いてみると「○○ができると言ったから」みたいな部分に行き着きます。不安に思いながらも仕方がないので任せるのですが、その後経過を確認するたびに特に何かを確認する様子もなく「没问题」「○○さんは心配し過ぎです」と即答してくれます。そして夜は「谢谢合作」とお決まりの乾杯です。不安を覚えながらも任せて、しばらくしてまた確認すると、ある時いきなり「できません」に変わってしまっている。「没问题」が「没办法」に変わる瞬間です。ここから「自分のせいではない」ロジックが展開されます。
まずは「こちらのせいではない」から始まります。計画を合意した際に言ったことなどすっかり忘れて(あるいは完全に無視して)、「そんな合意はしていない」と言い出します。サイン入り議事録等を示すとサイナーが当事者ではない場合は「そんな合意は私は知らない」とか「その人はもう担当ではないから無効だ」です。あるいは「○月○日までに完了するなんてそもそもあり得ない。だから、そんな要求をしたそちらが悪い」とか「難しいと分かっているのになぜ支援してくれないのか?支援契約を違反をしたそちらが悪い」です。要するに「こちらが悪いとでも言うのか?」といった論調で一方的なロジックが延々と展開されます。
いよいよ自分たちの非を認めざるを得ない状況になると今度は「私のせいではない」です。「私はやるように指示してあの人ができると言ったのだから、できなかったのはあの人のせい」です。これはもう必死、絶対に認めません。中国には人がたくさんいて代わりなどいくらでもいるので、彼らにとっては失敗≒失職なのです。なりふり構わず、子供のような言い訳をしてまでも、決して認めることはありません。あまりの見苦しさに腹がたつのを通り越して呆れてしまい、こちらも彼をクビにすることが目的ではないので議論する気が失せてしまいます。そうして彼は遂に逃げ切ることになります。
根拠のない安請け負い、没问题いつの間にやら没办法(川柳風に)、失敗は他人のせい、これらの特性をしっかり認識して、想定される上記のような言い訳を全て加味した上で仕事に当たれるのが、昔の中国ビジネスの達人でした。この能力も時代と共に不要になってきて、私としては残念な限りです。
中国語では「どうせ通じないから話す気になれない」つまり、発音の難しさが話せない理由である人がとても多いと思います。中国語には音のバラエティーが多く、拼音をきちんと使えないと伝えるのは本当に難しいです。知っている言葉でも口に出すと全く通じない。しかもどういうわけか、中国人は他の国の人に比べて、なんとか近い発音で話しているつもりでもその努力?を汲んで理解しようとしてくれる人が少ないです。「だいたい分かったからいいか」「たぶんこう言いたいのだな」というふうに、推測しながら会話を進めることをあまりしてくれません。その挙句に、中国人が聞き取れない時に発する「ああー?」というぶっきらぼうな口調や「チッ」というイラっとした舌打ち(日本人にはそう感じる)で凹んでしまい、二度と話したくなくなる人が大勢います。
しかし難しいといっても通じる言葉もたくさんあるわけで、通じる言葉だけを使って話すことでなんとか会話は成り立ちます。まずは単語の羅列でもなんでも良いのでとにかく会話をして慣れていく。そして並行して難しい言葉を練習して、マスターできれば加える、マスターできなければ使用せず練習を続ければな良いのです。とにかく会話をすることが重要です。
日本人が苦手なのは「日本人」「可乐(コーラ)」「去/就」などです。私は未だに中国人から「あなたは日本人なのに『日本人』の発音が下手だね」とからかわれますし、飛行機内でコーラを注文するとコーヒー(甘いミルク入りの)が出てきたりするので、自分が克服できている訳ではないということをお断りしておきます。それでも気にせずどんどん話しているうちに慣れてくるもので、苦手な単語をネイティブに聞いてもらいながら直す努力をしています。因みに、私が中国語会話で一番凹むのが、一所懸命に中国語で話しかけているのに相手から「Sorry,I cannot speak Japanese.」などと英語で返されることです。悔しいので「I am speaking Chinese.」と言うと「えっ⁉︎」というなんとも申し訳ないような顔をされてまた凹みます。中国語では、まず相手に中国語を話しているのだと認識してもらうまでに高い高い壁があります。それをようやく乗り越えてなんとか中国語を話していると分かってもらえても、流暢な日本語で「日本語で大丈夫ですよ」返されたりするのもガッカリします。中国語発音マスターへの道は険しいです。しかし凹んでいる場合ではありません。
日本人は恥の文化や暗記100点を目指す教育のためなのか、会話に消極的な人が多いです。ちゃんとできないと恥ずかしくて話せないという感じです。一方、多くの他の国の人たちは大して上手くもないのに間違いを気にせずどんどん話します。彼らは漢字の習得に時間がかかるので、会話から入らざるを得ないという事情もあります。日本人と違って見た目が明らかに中国人と違う外国人なので、そもそも下手で当たり前と認識されることが積極性に良い方向に影響しているということもあると思います。日本人が読み書きの習得が早いのに対して、彼らは会話の習得が非常に早いです。言語学習、特に会話はスポーツに似ています。「喋る聞く」の技能を伸ばしていくことが大切で、技能を伸ばすには繰り返し練習するのが一番です。使える言葉、単語の羅列からでいいので、どんどん会話をしていきましょう。
中国に住んでいる人限定にはなりますが、外出した際に看板や標識に書いてある知らない単語を調べて覚えていくという方法です。日常生活で必要になる言葉の網羅性を高めるという意味で有効だろうと考え、外出のたびに見かける知らない言葉を辞書アプリで調べることにしています。実際これで一定の成果が上がっているように思います。「あの時あそこに書いてあったな」などとその風景や出来事も含めて覚えるので記憶に残りやすいように思います。
中でも中国ユニークで面白いなと思うのがスローガンです。日本とは比べものにならないほど多いです。横断幕、垂幕、貼り紙、のぼり、ポスターなど掲載様式も様々です。共産党の方針や政府の政策についての宣伝や民衆教化が目的なので各地で同じものを目にすることが多いです。内容は社会主義の核心価値観をはじめ、「保护环境是我们的义务」や「向前一小步,文明一大步」「喝酒不开车,开车不喝酒」といった一般的なものから、習近平体制になって掲げられた「中国梦」「打黑」関係など、面白いものが多いので、記憶に残りやすいです。
ただ、効果を上げるために注意すべき点があります。それは、調べただけではすぐに忘れるので記録が必要ということです。記憶力の優れた方なら問題ないのでしょうが、私のような一般人は調べたからといってすぐに覚えられるものではありません。知らない単語を見つけた時に辞書アプリで調べるまでは良いのですが、意味が分かったらなるほど~と満足してしまいそこで終わり。そのままキレイさっぱり忘れてしまうことが多々あります。結果、次回同じ単語を見かけたら知らないものとしてまた調べ、あれ?これ以前も調べたような???となる、あるいは以前調べたことすら思い出せないようなこともあります。こんなことではもったいないので、やはりメモを取るとか写真を撮っておくとかの、再確認〜定着のための記録が必要です。煩わしいですが頑張りましょう。
受験生などがよくやる「暗記系の科目は寝る前にやる」という方法です。諸説あるようですが、脳は睡眠中に新しく覚えたことを整理してまとめ、一時保存する仕組みになっているそうです。それを利用し、寝る30分前に覚えて、しっかりと寝て、起きたらすぐに再確認するのです。私も実践していますがかなり効果があると実感しています。記憶力の落ちてきたおじさんにも十分有効です。
留意点としては、まず十分な睡眠時間を確保することです。アメリカのペンシルバニア大学とワシントン大学で行われた研究によると、長期記憶に効果的な睡眠時間としては8時間程度が理想なのだそうです。6時間以下の場合は認知機能が時間が経つにつれ低下するそうです。一夜漬けで一所懸命に勉強しても、睡眠時間が伴わなければ取り入れた情報を正常に処理できないので、長期間の記憶定着には繋がらないそうです。(加齢と共に睡眠時間が短くなりがちなので「8時間寝る努力」が必要です。)そして暗記した後はあれこれと別のことをやらずにさっさと寝ることです。暗記の後にネットサーフィンをしたりYouTubeで好きな動画を延々と見たりすると、記憶の定着が妨げられます。
ただ、継続するのが大変です。もちろん毎晩定期的やるのが理想ですが、できるとは限りません。社会人だと突発の残業もあるし付き合いの飲み会もあります。深酒をしてしまったら、単語どころか自分が何をしていたのかすら覚えていない状態、翌朝は二日酔いでやる気ゼロ、寝坊してあわてて出勤、こんな調子では暗記&確認どころではありません。小さなお子さんがいる家庭では、子供を寝かし付けているうちに自分もグーグー寝てしまうのはよくあることです。このようにやったりやらなかったりしているうちにだんだん億劫になり、遂にはやめてしまうことはよくあることです。そういったことから、この方法は効果はあっても継続がかなり難しいと思います。自分に厳しく毎日やろうと決めていたら、できなかった日があるとそれが挫折感や自分へのストレスになったりして、かえって学習へのモチベーションを下げてしまうはめになりかねません。正直言って私もHSKなどの試験日が迫ってきて詰め込み暗記が必要な時にしかやっていません。あまり肩に力を入れず、試験などの節目を設定して、それに向けた集中トレーニングみたいな意味合いで実施するくらいが丁度良いと思います。
中国で単身赴任をしていると行動が限られてどうしても運動不足、体がなまってきます。そういう時にはフィットネスジムに行ってみることをお勧めします。日本でジムというとどちらかといえば年配の人が多く、おじいちゃんおばあちゃんが毎日お風呂に入りにきているかのようなノンビリした雰囲気ですが、中国のジムには若い人が多いのです。経済が発展して飽食の時代に入っている中国では肥満の人が増え、且つ若い女性を中心に美意識が上がってきているので、健康で美しくいようとジムでトレーニングをする人が多いのです。平日の終業後や休日の午後などは若い人の熱気でムンムンしています。男性でも女性でもやはり若い人が多い方がきらびやかで活気があって楽しいものです。日本では新年にダイエットを誓ってジムに入会したものの、年に数回しか行かなかったという、ジム経営者の思うツボになってしまっている人がたくさんいます。そういう人でも中国でなら続けられる可能性が高いです。是非一度見学に行ってみて下さい。
そして中国のジム(私が行っていたところ)では、トレーニングをしているとコーチが気軽に話しかけてきて指導をしてくれました。相手もわきまえているので断ればしつこくはしてきません。私の場合は特に断らずに言われるがままに指導を受けていたので、何人かのコーチと顔見知りになり、会えばちょっとした会話をするくらいの仲になりました。ジムが楽しいのでサボらず定期的に行く、行けば顔見知りと会話をする、会話をするためにトレーニングの用語を覚えていくという、中国語の勉強にも寄与するいい活動になっていました。
私の中国での空手の教え子たちが日本の大学に留学していますが、みんな日本の大学生と同じように勉強をし、空き時間があればコンビニなどでバイトなどをして楽しく過ごしています。しかし昔(80年代後半)の中国人留学生はずいぶん様子が違っていました。
私は大学生の時に寮に入っていたのですが、その寮に中国人留学生も住んでいました。彼らは国費留学生ということで中国国内の審査を通過した優秀な方々でした。興味があったので話してみたいと思っていたのですがその機会がありませんでした。というのが、彼らはほとんど寮にいないのです。昼は大学、夜は延々とバイト、寮には明け方に帰って仮眠する程度だったからです。一般の大学生活をしている我々と合う時間がなかったのです。
勉強の方は国から派遣されているのでもちろん手を抜くことはできません。日本語がおぼつかないにも関わらずしっかりやって上位の成績を収められていたと聞きました。しかし彼らが最も力を入れていたのがバイトです。その内容もハードでお金になるものをやっていました。当時は日本がバブル期だったこともあり中国との経済格差が大きく、日本で1年間働けば中国で一生暮らせる金を稼げるということでした。なので彼らは必死でした。せっかく日本に来たのにのんびり寝ている場合ではありません。夜の工事現場の交通整理、夜間運送トラックの荷物の積み下ろし、深夜営業店での仕事など、一分一秒を惜しむかのように働いていました。たまに見かけることがありましたが、何というか、ものすごく活力に満ち溢れた感じでした。バブルで浮かれて遊んでいる我々日本人学生とは大違いでした。彼らと仮に時間が合って話をしても、その価値観の違いから全く会話にならなかったのではないかと思います。
当時は同じような経済的な理由で日本を目指した方はたくさんいらっしゃいます。国費留学とまではいかなくても苦しい生活の中からかき集めたお金で日本に留学したり、留学ではないですが、とにかく行けば何とかなるだろうと、日本語もできないのに渡航費だけを握りしめて日本に行ったような人もいます。彼らにとって日本は近くて繁栄している魅力的な国だったということです。留学後も日本に留まって仕事をした人もたくさんいます。彼らは逞しく日本社会で生き抜き、そして親日派知日派になって中国社会で活躍しています。とてもありがたいことだと思います。
近年中国人が留学先に日本を選ぶことは極めて少なくなりました。ある有名進学校の学生の留学先をみると、一番多いのが北米で半分以上、次が欧州、次がオーストリアやシンガポール、日本はわずか数%という少なさです。日本にいると中国人留学生は日本にたくさん来ていると思うかもしれませんが、全体からみると実は超マイナーなのです。政治的な問題もさることながら、やはり経済的にも学術的にも日本に魅力がなくなったことが一番の要因だと思います。残念なことですが、一方で旅行先としては日本は大人気なので、それをヒントに新しい日中関係が築けないものかと考えてみたりしています。
近年では会議の様子も随分変わってきて、目的を明確にして議論を結論に導き、議事録を作ってそれに基いて実行する、ということができるようになってきました。しかし昔の中国では会議をしても決まらない、決まったことがあっても実行しないというのが普通でした。
まず「決まらない」です。明確な目的が告げられないままメンバーが集められます。そして上位職者と思われる誰かが何かを延々と話します。次にそれに関連する人が自分の意見を延々と話します。その多くは問題を指摘されたことに対する言い訳です。そして参加しているびっくりするほど多くの脇役(何も発言しない人たち)が発言をノートに黙々とメモしていきます。(ついでにいうと「人の話はちゃんと最後まで聞きなさい」と教育されてきている多くの日本人が黙って聞いている。)これが続いていき終了時間がきたら解散です。つまり全員が単に自分の考えを一方的に喋るだけで、誰にも合意や結論を導き出そうという意思がないのです。当然何も決まらないし、発言をもれなく書き込んだノートを読み返す人もいません。中国人の部下になぜこうなのかを聞いてみると、「(当時の)中国では会議は打ち合わせではなく偉い人の演説を聞く場です。学校でも家庭でも先生や親が一方的に喋り、子供はそれを黙って聞いているだけでした。そうやって育ってきているので議論をするなんてことはなく、あるとしたら自分が窮地に立たされる時だけで、自分はこう思うと話せば終わりです」ということでした。面子を大事にする人たちなので相手を非難することになる議論を避ける思いもあるのだと思います。
そして「実行しない」です。やっとのことで結論を導き出したのでそれを議事録に残そうと指示するのですが、出てくるのは自分がノートにメモした各人の発言の羅列。全く意味がありません。そこで議事録の書き方を指導してなんとか意味を成すものを作らせて配布するのですが、これを誰も実行しない。公式なビジネス契約ですら経営責任者が「こんなものはただの紙。守る必要はない」などと平気で宣っていた時代です。当然といえば当然なのですが、それでも決議事項を実行させるにはこの方法以外になく、議事録を示して「◯月◯日にみんなでこう決めたよね?」としつこくしつこく説得するとしぶしぶやるという状態でした。
そんな様子だったので、目的を明確にして議論を方向付けできる、実行に導ける日本人は重宝がられて、不思議な信頼を集めていました。たぶんどの方面の人からも味方のように思えたのだと思います。私たちの仕事はパートナー会社の技術支援だったのですが、いつの間にやら先方社内の調整役になり、その腕を買われて何度も支援要請を受けるようになっていました。「あれ?私の仕事はこういうことだっけ?」と考えることも度々ありました。少なくとも技術屋の仕事ではないことをたくさんやっていたと思います。
近年、中国の会社の会議室に「効率的な議論を」とか「win-winを」とか書いてある貼り紙を見たりすると、昔を思い出して微笑ましい気持ちになったりします。あっという間に経済大国になれたのにはこういう基礎部分の成長が貢献していると思います。
中国のおみやげといったら何でしょうか。現在は中国にモノが溢れていて中国らしいものが目立たなくなりました。日本人は中国的なものを好きな人が少ないですから選択が難しいです。無難なところではお茶でしょうか。中国ではなく経由する韓国の海苔とか博多の明太子などの方が喜ばれるという話も聞きます。あるいは奥様からは「モノはいらないからお金を持って帰って」とか。昔の中国には定番のおみやげがありました。偽物のブランド品、違法コピーのDVD、クスリです。
偽物のブランド品では高級時計が特に喜ばれました。おおっぴらではなく比較的目立たない地下街とかに小さな店があり、言えば奥から次から次へときらびやかな高級時計が出てきます。ロレックス、オメガ、タグホイヤー、パネライ、ブルガリ、ブライトリング、ゼニス等々、ほとんどのブランドがありました。私自身は保有しませんでしたが性能も悪くはなかったそうで、見た目そっくり、そして安いということで大人気でした。興味深かったのは仕事では中国語を全然話さない人が、こういう店では片言の中国語を駆使して値引き交渉をしていたことです。交渉というより「便宜点儿吧!」しか言わないし知らないので、一方的な値引き要求です。意外と結構な値引きを勝ち取れたりして面白かったです。相手が日本人ということできっと元々ぼったくり価格を提示していたのだと思います。女性ものならグッチやエルメスのバックです。いい年したおじさんが奥さんへのおみやげを安く買おうと頑張る姿は微笑ましいものでした。
そして違法コピーのDVDです。そんなのどこで撮ったの?どうやってコピーしたの?と聞きたくなるほど、世界中いろんな種類の映画、ドラマが大量に破格の値段で売っていました。日本の昔の名作映画やアダルトものなど、5元とか10元でみんな嬉しそうに買っていました。当時は中国で違法という概念がなかったのか薄かったのか、結構目立つ場所にある大きな店や屋台で堂々と売っていました。街外れの屋台に行くと品揃えは少ないけど更に安い。中国の映画館で新作映画を見て、その帰り道でふと屋台をみると、その作品が既にコピーDVDで販売されていてびっくりしたこともあります。
そしてクスリ、いわゆるバイアグラです。当時狼一号と呼ばれていたそのクスリを、中国通のおじさんから「〇〇通りの〇〇という店で売っているから買ってきて!」と頼まれて、まだ若かった私はおっかなびっくり買いに行ったことを思い出します。当時日本ではこのようなクスリは市販されていませんでしたが中国では普通に売っていましたので、買うのは容易でした。しかしそれにしても「狼一号」というネーミングには笑いました。
首尾よく頼まれたおみやげを買って「さあ帰国!という時に、多くの人はふと気が付きます。「これってひょっとして日本への持ち込みは禁止なのでは?」中国で当たり前に売っているので違法であることの意識が薄れてしまっているのです。ではどうするか?律儀に(?)シラっと持ち帰る人、その結果税関で見つかって没収される人、いろいろいましたが、多くの人は中国の会社に置いて帰っていました。そして後に出張した人がそれらの物品を見付けて「あの人がこんなものを」と笑う、それがお決まりのパターンでした。
私は中国語の学習を始めてかなり時間が経ちますが、未だに始めて会った人の言葉が聞き取れないことが度々あります。一方で特定の人とコミュニケーションが深まってくると、同じ言葉でもその人の口から出たものなら聞き取れたりします。単純にその人の発音や思考方法に慣れるからだと思うのですが、この現象は私が勉強してきた英語やスペイン語に比べて中国語が明らかに顕著です。中国語は音のバラエティーが多く、発信する音の個人差も大きいからだろうと推測します。(ただ、深く付き合っても仲良くなっているのにどうしても聞き取れない人もいます。その人が重慶弁であるというのが原因の一つですが、他の人の重慶弁は分かるので、本当に不思議です。)
そこで私は、不特定多数の人の言葉を漫然と聞くのではなく、特定の人と集中的にコミュニケーションをして、自分の会話力と「分かる感」を高めてそれを拡大していく方法をとっています。まずは聞き取れる人を対象に会話を深め、気になる言い回しは後から文字で確認し、同じ言葉を他の人がどういう言い方をするか聞いてみるという具合です。
その「特定の人」としては、中国語の先生、会社のドライバーさん、職場の同僚など数名をターゲットとして勝手に設定しています。それ以外の人と話をしないという訳ではないですが、他の人の言うことは聞き取れなくても割り切って聞き流すようにしています。一方ターゲットとの会話では、聞き取れない言葉があったらとことん聞いて完全に理解するようにしています。もちろん「リスニング」で紹介した「録音して聞く」手法もこのターゲットの方にお願いします。
ターゲットの対象としては、会話する機会が多い人なら誰でも良いですが、やっぱり自分が好きな人が楽しくていいです。嫌いな人だと苦行になり続きません。そして、できるだけ方言が少ない人がいいと思います。方言は慣れてうつってしまうからです。私の周囲の日本人で慣れてしまって南京弁になってしまっている人もいます。それと当たり前ですがあまり寡黙な人とは会話が盛り上がらないので、おしゃべりが好きな人が望ましいです。私の中国語の先生に絶え間なく喋り続ける人がいましたが、その方とは会話というよりはむしろリスニングの訓練でした。
この方法を続けてターゲットを少しずつ拡大していけば、いずれは誰とでも会話できるようになるはず!と気の長い計画を進めています。人によって意識して聞くか聞かないかというだけの話ですが、かなり効果的なのでお勧めします。
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時間がとれない兼業学習者でもHSK6級合格レベルに到達できるノウハウ集