中国語以前に、そもそも日本人は外国語を話すことが苦手な人が多いように思います。ものごとの正解のみを良しとする教育の影響か、恥の文化の影響か、上手く話せないと恥ずかしい」とためらう人がとても多いです。あるいは「人の話は最後まで黙って聞きなさい」と教育されているためか会話の中で話すチャンスを捉えられない人もいます。外国人との会議で外国人が一方的に話をして日本人はそれにただ頷いているだけ、そうしているうちに時間切れ終了というのは会社でよく見る光景です。
そんな日本人の一人である私でもなんとか能動的に話ができる工夫を紹介します。
先生の良し悪しで学習効果は大きく変わると思います。私は約10年の学習期間内に8人の先生から学びましたがほとんどがいい方でした。というか、授業を受けてみてダメだと思ったらすぐに代えて頂きました。少々冷たいようですが同じ時間とお金を使って教えてもらうならいい先生の方が良いですし、ダメな先生だといくら続けても伸びが期待できないので、先生の選択は非常に大切だと思っています。
先生は全員ネイティブの中国人の女性でした。最初の先生は日本語が少し話せる方でしたが、初級段階は日本語を交えて、中級以降は中国語オンリーで教えて頂きました。拼音や用語の意味、使い回しを教えて頂くのにはよても良かったです。ただ、文法だけは難かったです。文法についてだけは日本人の先生の方が自分もやってきているだけに日本人が苦手な部分もよく知っていて有利なのかもしれません。私は日本語で書かれた文法書を購入して授業を補完していました。
中級以降はあえて日本語ができない先生をお願いしました。先生が日本語ができると、詰まったらどうしても日本語に逃げるようになるからです。日本語を完全に排除するのは良い考えだと思います。そしてHSK6級を目指すようになってからは中国の大学院生やその卒業生で外国人に中国語を教えることを専門にした先生にお願いするようにしました。彼らは教えるために中国語を客観視して説明する能力に長けていて、教え方も上手です。
性別についてはそもそも男性の先生は少なくて私自身経験がないのですが、中国語学校のオーナーなどに聞くと言語を扱うセンスや真面目さは女性の方が長けているという人が多いということです。声も男性より女性の方が聞き取りやすい気がします。ただ、実際の生活では女性とばかり話すわけではないしHSKのヒアリング試験でももちろん男性の声がありますので、授業以外のところで男性の声にも接する工夫が必要だと思っています。
初級から中級くらいまでは基本的に学校が用意してくれるカリキュラムとテキストで学習を進めました。最初の3ヶ月はひたすら拼音の練習、その後はテキストにそって単語を解説していただき、文章を読み、練習問題をやるというスタイルです。習った単語は宿題として次回までに拼音を含めて全て覚え、次回の授業の最初に書き取りテストを行います。授業は2時間、週に3回通っていたので宿題が大変でした。初級のうちは単語数が少なかったのですが中級になってくると一度の授業で80ほどの単語を習うため、次回までに覚えるのが本当に大変で、プライベートの時間はほぼ全て単語の暗記に費やすような期間がありました。意地になって覚え続けそれが快感になってましたがあんなことは今ではとてもできるとは思えません。自分でもよくやったものだと思います。
中級くらいになるとHSKで実力を確認するようアドバイスされ、HSK5級合格に向けた学習を進めました。HSKの過去問題や模擬問題を集めたテキストを使用しました。難しかったのは文法とリスニングでした。特に文法はそれまでの授業で習わなかった訳ではないですが、散発的な知識だけでいきなり問題に当たるという感じでとても苦労しました。中国語オンリーで文法を学ぶのは難しかったので日本で買った文法書で補足学習しました。
2年弱で5級の合格点(6割)をクリアできたのは、勉強というものから離れて久しかった私にとっては大きな喜びでした。学校が祝賀会を催して下さって嬉しかったです。
自分としては5級をクリアした時点でゴールインした感があったので、出向業務が終了したこともあって学習を休みました。独学で続けようと思ってはいたのですが、中国語の環境から離れてしまうと私のような消極的な動機で始めた者にはモチベーションの維持が難しく、次第にやめていってしまいました。
その後、また出向することになったので学習を再開しました。とりあえずはHSK6級受験は意識せず、自分が興味があるビジネス領域のテキストを紹介してもらい、それに沿って学習を進めました。中国での外資系企業や国内企業の活動展開や業務で必要な知識が学べ、中国語というより内容を楽しみました。そうしているうちに少しづつ自信が付いてきたのでHSK6級に挑戦することにしました。6級では求められる語彙数が5級の倍になるため、先ずは集中的に単語を暗記しました。暗記効率を上げるためにいろいろ試してみましたが、音と視覚で覚えていくキクタンが効果があったように思います。ただ、覚えてもすぐに忘れるという状態を繰り返していたのが正直なところで、結局受験前の数週間でなんとか詰め込んだものの、試験が終わればほとんど忘れてしまいました。残念なことです。次に文法、6級の文法問題は間違い文探しなのですが、先生が6級文法問題に出題される典型的な間違いを整理して説明して下さり、それを理解することで5割から7割程度は得点できるようになりました。結果、6級の及第点をクリアできました。周囲に同じような会社員で6級をクリアしている人は少なかったこともありとても嬉しかったです。
いい学校、いい先生に恵まれて幸運だったと思っています。
「楽しく学習する工夫」に入る前に、楽しくなくても必ずやるべきことをお伝えします。それは「拼音の苦行」に耐えることです。
一般に中国語学習ではまず最初に「拼音」を練習することになると思います。私はこれは本当に大切だと実感していますし、知人にも同じ意見の方が多いです。
私も中国で中国語語学校に入学して先生についてもらって拼音から始めた訳ですがこの先生が(良い意味で)非常に厳しく、最初の三か月は拼音だけを妥協なく練習させられました。中国語の発音は日本語にはないものが多いため日本人には習得が難しいものがたくさんあります。いい歳したおじさんが若い女性の先生に叱られながらうーうー発音の練習をするのははっきり言って大変な苦行でした。少しでも違っていたら、本人は違っていると認識できもしないのにおかしいと指摘され、出来の悪い子供のように何度も練習させられる。おじさんのプライドも何もあったものではありません。第一回目の授業で直ぐに心が折れて、その後は嫌々ながらも「お金もはらったことだし」と義務的・機械的に教室に通っていた次第です。
なんとか苦行をやり通し合格点をもらう頃には、相変わらずうまく喋れている気はしないものの、聞いた単語が何であるかはおぼろげながら分かるようになっていました。基礎がしっかりできたのか、今でも発音が上手い(もちろん日本人にしては)と褒められることがありますし、何よりリスニング力の向上に大いに貢献しています。
一方で、私と同じくらいのタイミングで学習を始めた人の話なのですが、その人は元々中国語が大好きで日本にいる時に独学で基本的な勉強を済ませていました。それはそれで良いのですがいざ本格的な学習を始めると独学で定着したクセが抜けず、なかなか上手く発音できません。先生には「一旦独学でやったことは全て忘れて下さい!」と言われ続けましたが結局それもできませんでした。「まあ中国に永住して毎日話すわけではないのでいいか」などと言っておられましたが、問題は話せないことだけではなく、音が判別できずにリスニング力がなかなか向上しないことでした。その後も毎日通勤時間も昼休みも就業後も中国語を勉強するような熱心な人でしたが、結局あまり進歩しないまま出向を終えて帰国していきました。
特に拼音など、教わらないと正しい状態が分からないものについては独学は控えめに、苦しくても恥ずかしくても挫けず粘り強く、という教訓でした。実際にこの段階で黙って退場していかれる方は多いです。なんとかやり遂げましょう!
時間がとれない兼業学習者でもHSK6級合格レベルに到達できるノウハウ集