私の中国での空手の教え子たちが日本の大学に留学していますが、みんな日本の大学生と同じように勉強をし、空き時間があればコンビニなどでバイトなどをして楽しく過ごしています。しかし昔(80年代後半)の中国人留学生はずいぶん様子が違っていました。
私は大学生の時に寮に入っていたのですが、その寮に中国人留学生も住んでいました。彼らは国費留学生ということで中国国内の審査を通過した優秀な方々でした。興味があったので話してみたいと思っていたのですがその機会がありませんでした。というのが、彼らはほとんど寮にいないのです。昼は大学、夜は延々とバイト、寮には明け方に帰って仮眠する程度だったからです。一般の大学生活をしている我々と合う時間がなかったのです。
勉強の方は国から派遣されているのでもちろん手を抜くことはできません。日本語がおぼつかないにも関わらずしっかりやって上位の成績を収められていたと聞きました。しかし彼らが最も力を入れていたのがバイトです。その内容もハードでお金になるものをやっていました。当時は日本がバブル期だったこともあり中国との経済格差が大きく、日本で1年間働けば中国で一生暮らせる金を稼げるということでした。なので彼らは必死でした。せっかく日本に来たのにのんびり寝ている場合ではありません。夜の工事現場の交通整理、夜間運送トラックの荷物の積み下ろし、深夜営業店での仕事など、一分一秒を惜しむかのように働いていました。たまに見かけることがありましたが、何というか、ものすごく活力に満ち溢れた感じでした。バブルで浮かれて遊んでいる我々日本人学生とは大違いでした。彼らと仮に時間が合って話をしても、その価値観の違いから全く会話にならなかったのではないかと思います。
当時は同じような経済的な理由で日本を目指した方はたくさんいらっしゃいます。国費留学とまではいかなくても苦しい生活の中からかき集めたお金で日本に留学したり、留学ではないですが、とにかく行けば何とかなるだろうと、日本語もできないのに渡航費だけを握りしめて日本に行ったような人もいます。彼らにとって日本は近くて繁栄している魅力的な国だったということです。留学後も日本に留まって仕事をした人もたくさんいます。彼らは逞しく日本社会で生き抜き、そして親日派知日派になって中国社会で活躍しています。とてもありがたいことだと思います。
近年中国人が留学先に日本を選ぶことは極めて少なくなりました。ある有名進学校の学生の留学先をみると、一番多いのが北米で半分以上、次が欧州、次がオーストリアやシンガポール、日本はわずか数%という少なさです。日本にいると中国人留学生は日本にたくさん来ていると思うかもしれませんが、全体からみると実は超マイナーなのです。政治的な問題もさることながら、やはり経済的にも学術的にも日本に魅力がなくなったことが一番の要因だと思います。残念なことですが、一方で旅行先としては日本は大人気なので、それをヒントに新しい日中関係が築けないものかと考えてみたりしています。