中国の店員さんの接客については今でも多くのクレームを聞きますが、私に言わせれば格段に良くなっています。
以前の接客というのはびっくりするほど酷いものでした。事務作業を嫌々こなしている状態というのが正確だと思います。お店のレジであれば商品は台の上に投げてよこす、お釣りももちろん投げてよこします。お札はメモ書きしたり丸めてポケットに入れたりしているのでグチャグチャです。おしゃべりしながらダラダラ作業するのでとても遅い、客が割り込もうが何しようがおかまいなしです。客が来るまで突っ伏して寝ている、カップラーメンをズルズル食べながら作業する、その食い汁や唾が商品やお金に飛び散る。商品の問い合わせには答えない、答えないから繰り返し聞くとめんどくさそうに「不知道」。もちろんいらっしゃいませもありがとうございましたもなし。笑顔などは望むべくもなくほぼ100%仏頂面でした。当時はモノを買うという行為が本当にストレスいっぱいで嫌でした。
契機は2008年の北京オリンピックでした。国際大会を開催するにあたり国を挙げてサービス向上活動に取り組みました。開始当初は店員さんのぎこちない作り笑顔が気持ち悪かったものです。更に、経済的に裕福になり海外に旅行して外国の行き届いた接客サービスを経験する人が増えるにつれて、国内の接客サービスの改善を求める人が増えてきました。そこからは急速に近代化したと思います。
今では、爽やかな笑顔、明るい挨拶や受け答え、それなりに行き届いた応対、更にはキャッシュレスの発展でレジでのストレスが大幅に軽減されました。本当に住みやすい国になったものです。私は心から感動しています。
改革開放の加速期は、昼の会議は単なる表敬訪問、夜の宴会で白酒をグイグイ飲みながら大きなビジネスが決まるような豪快な時代でした。その宴会がとにかくすごかったです。当時私は東北地方の国有企業と仕事をしていたのですが、同時期に南で仕事をしていた知人に聞くと東北ほど強烈ではなかったものの、やはり似たような状況だったそうです。宴会は毎日、酒は50度以上の茅台などの高級白酒が基本。白酒用の小さなグラスが用意されるのですがそれは全て下げさせて、普通のコップになみなみと注いで乾杯します。乾杯というのは文字通りの意味で、一気飲みしてコップを逆さにして相手に飲み干したことを示します。これを一人ずつ入れ替わり立ち替わり全員とやり、一周して撃沈しなければ更に続きます。私も酒は嫌いな方ではなく返り討ちにするくらいの気持ちでグイグイ飲んでいたので、酒の場では結構面白がられていたように思います。中国人はみんな酒が強いなあと思っていましたが彼らもやはり同じ人間、よく見ると撃沈しないようにいろいろと工夫していることが分かってきました。
①酒豪を参加させる
各部門に何人か底なしに酒が飲める人がいました。今思えば宴会要員として意図的に配置していたのかもしれません。その酒豪を参加させて前半の乾杯合戦をリードさせます。酒豪がターゲットを決めて攻め始めるとそこに他のメンバーが押し寄せて怒涛の乾杯攻撃が繰り広げられます。
②知らぬ間に消える
何人かが乾杯合戦を繰り広げている間に、何人かはトイレに行ってゲーゲーやってスッキリして戻ってきて合戦を再開します。飲んだふりしてやり過ごすとか水に入れ換えるとかこっそり捨てるとかといった方法も人に聞いたことがありますが、基本的にはそれらはご法度なので飲むべき時はみんなしっかり飲んでいたと思います。
③後から現れる
幹部社員クラスは残業だなんだと言って客人が半死状態になった宴会中盤に現れたりします。しかもアルコール度数が異常に高い故郷の地酒などを持ってきて改めて客人にふるまいます。一般の日本人はだいたいこれで全滅していました。
そんな飲み会なので終わるのは結構早かったです。私は勝ち残る(?)こともあったのですが、気が付くとみんなトイレにこもっていて、待っていても誰も戻らずそのままお開きということもありました。凄い勢いで乾杯合戦、あっという間に全員死んで終わり。何度もやっているとそのリズムに慣れてきて、前半とばして相手の様子を見てから中盤以降の戦い方を決めるという余裕もできてきました。今では不要なスキルですが。
中国現地で学習する人限定になるかもしれませんが、中国の教材についての知見を紹介します。これは中国語学校のオーナーや大学で外国人に中国語を教えることを学んでいる先生などから頂いたコメントを総括したアドバイスです。中国語学校に通う人は学校で紹介してもらったら良いと思いますが、個人で選ぶ場合はある程度の予備知識がないとどんな教材を買えば良いのか分からないと思います。本屋に行くといろんな教材があって選択に困ります。
出版社で絞り込むならば「北京大学出版社」と「北京语言大学出版社」が2強のようです。外国人への教え方のノウハウが詰め込まれていて且つHSKを想定した模擬練習もふんだんに織り込まれているなど専門性が高いそうです。そしてシリーズでいえば「成功之路」と「博雅汉语 」が良いようです。特に「成功之路」は中国語を始めたばかりの初級レベルから中級上級レベルへとステップアップしていき、更にビジネスなどの専門分野もラインナップされています。大学での留学生教育の教材として幅広く使用されているようです。
ただ、会社員である私の場合は「成功之路」等のステップアップ教材で時間をかけてじっくり積み上げていくことは難しかったので、一つの教材が終わるたびに先生と相談してその時のレベルに応じた教材を紹介してもらって購入していました。学習にあまり時間が割けない人はやはり有識者にアドバイスしてもらいながら進めるのが効率的だと思います。
中国は急速な発展を遂げて今では立派な文明国家です。人々のマナーも向上して、昔の中国を知っている日本人が見たらその変化にびっくりすると思います。私はそんな急速な発展の中に身をおいていたのですが、昔の中国を知っているからこそ今の中国を愛せるのだと思っています。ここでは恐らくもう経験することができない古き良き(?)中国を紹介したいと思います。
先生の良し悪しで学習効果は大きく変わると思います。私は約10年の学習期間内に8人の先生から学びましたがほとんどがいい方でした。というか、授業を受けてみてダメだと思ったらすぐに代えて頂きました。少々冷たいようですが同じ時間とお金を使って教えてもらうならいい先生の方が良いですし、ダメな先生だといくら続けても伸びが期待できないので、先生の選択は非常に大切だと思っています。
先生は全員ネイティブの中国人の女性でした。最初の先生は日本語が少し話せる方でしたが、初級段階は日本語を交えて、中級以降は中国語オンリーで教えて頂きました。拼音や用語の意味、使い回しを教えて頂くのにはよても良かったです。ただ、文法だけは難かったです。文法についてだけは日本人の先生の方が自分もやってきているだけに日本人が苦手な部分もよく知っていて有利なのかもしれません。私は日本語で書かれた文法書を購入して授業を補完していました。
中級以降はあえて日本語ができない先生をお願いしました。先生が日本語ができると、詰まったらどうしても日本語に逃げるようになるからです。日本語を完全に排除するのは良い考えだと思います。そしてHSK6級を目指すようになってからは中国の大学院生やその卒業生で外国人に中国語を教えることを専門にした先生にお願いするようにしました。彼らは教えるために中国語を客観視して説明する能力に長けていて、教え方も上手です。
性別についてはそもそも男性の先生は少なくて私自身経験がないのですが、中国語学校のオーナーなどに聞くと言語を扱うセンスや真面目さは女性の方が長けているという人が多いということです。声も男性より女性の方が聞き取りやすい気がします。ただ、実際の生活では女性とばかり話すわけではないしHSKのヒアリング試験でももちろん男性の声がありますので、授業以外のところで男性の声にも接する工夫が必要だと思っています。
初級から中級くらいまでは基本的に学校が用意してくれるカリキュラムとテキストで学習を進めました。最初の3ヶ月はひたすら拼音の練習、その後はテキストにそって単語を解説していただき、文章を読み、練習問題をやるというスタイルです。習った単語は宿題として次回までに拼音を含めて全て覚え、次回の授業の最初に書き取りテストを行います。授業は2時間、週に3回通っていたので宿題が大変でした。初級のうちは単語数が少なかったのですが中級になってくると一度の授業で80ほどの単語を習うため、次回までに覚えるのが本当に大変で、プライベートの時間はほぼ全て単語の暗記に費やすような期間がありました。意地になって覚え続けそれが快感になってましたがあんなことは今ではとてもできるとは思えません。自分でもよくやったものだと思います。
中級くらいになるとHSKで実力を確認するようアドバイスされ、HSK5級合格に向けた学習を進めました。HSKの過去問題や模擬問題を集めたテキストを使用しました。難しかったのは文法とリスニングでした。特に文法はそれまでの授業で習わなかった訳ではないですが、散発的な知識だけでいきなり問題に当たるという感じでとても苦労しました。中国語オンリーで文法を学ぶのは難しかったので日本で買った文法書で補足学習しました。
2年弱で5級の合格点(6割)をクリアできたのは、勉強というものから離れて久しかった私にとっては大きな喜びでした。学校が祝賀会を催して下さって嬉しかったです。
自分としては5級をクリアした時点でゴールインした感があったので、出向業務が終了したこともあって学習を休みました。独学で続けようと思ってはいたのですが、中国語の環境から離れてしまうと私のような消極的な動機で始めた者にはモチベーションの維持が難しく、次第にやめていってしまいました。
その後、また出向することになったので学習を再開しました。とりあえずはHSK6級受験は意識せず、自分が興味があるビジネス領域のテキストを紹介してもらい、それに沿って学習を進めました。中国での外資系企業や国内企業の活動展開や業務で必要な知識が学べ、中国語というより内容を楽しみました。そうしているうちに少しづつ自信が付いてきたのでHSK6級に挑戦することにしました。6級では求められる語彙数が5級の倍になるため、先ずは集中的に単語を暗記しました。暗記効率を上げるためにいろいろ試してみましたが、音と視覚で覚えていくキクタンが効果があったように思います。ただ、覚えてもすぐに忘れるという状態を繰り返していたのが正直なところで、結局受験前の数週間でなんとか詰め込んだものの、試験が終わればほとんど忘れてしまいました。残念なことです。次に文法、6級の文法問題は間違い文探しなのですが、先生が6級文法問題に出題される典型的な間違いを整理して説明して下さり、それを理解することで5割から7割程度は得点できるようになりました。結果、6級の及第点をクリアできました。周囲に同じような会社員で6級をクリアしている人は少なかったこともありとても嬉しかったです。
いい学校、いい先生に恵まれて幸運だったと思っています。
時間がとれない兼業学習者でもHSK6級合格レベルに到達できるノウハウ集