改革開放の加速期は、昼の会議は単なる表敬訪問、夜の宴会で白酒をグイグイ飲みながら大きなビジネスが決まるような豪快な時代でした。その宴会がとにかくすごかったです。当時私は東北地方の国有企業と仕事をしていたのですが、同時期に南で仕事をしていた知人に聞くと東北ほど強烈ではなかったものの、やはり似たような状況だったそうです。宴会は毎日、酒は50度以上の茅台などの高級白酒が基本。白酒用の小さなグラスが用意されるのですがそれは全て下げさせて、普通のコップになみなみと注いで乾杯します。乾杯というのは文字通りの意味で、一気飲みしてコップを逆さにして相手に飲み干したことを示します。これを一人ずつ入れ替わり立ち替わり全員とやり、一周して撃沈しなければ更に続きます。私も酒は嫌いな方ではなく返り討ちにするくらいの気持ちでグイグイ飲んでいたので、酒の場では結構面白がられていたように思います。中国人はみんな酒が強いなあと思っていましたが彼らもやはり同じ人間、よく見ると撃沈しないようにいろいろと工夫していることが分かってきました。
①酒豪を参加させる
各部門に何人か底なしに酒が飲める人がいました。今思えば宴会要員として意図的に配置していたのかもしれません。その酒豪を参加させて前半の乾杯合戦をリードさせます。酒豪がターゲットを決めて攻め始めるとそこに他のメンバーが押し寄せて怒涛の乾杯攻撃が繰り広げられます。
②知らぬ間に消える
何人かが乾杯合戦を繰り広げている間に、何人かはトイレに行ってゲーゲーやってスッキリして戻ってきて合戦を再開します。飲んだふりしてやり過ごすとか水に入れ換えるとかこっそり捨てるとかといった方法も人に聞いたことがありますが、基本的にはそれらはご法度なので飲むべき時はみんなしっかり飲んでいたと思います。
③後から現れる
幹部社員クラスは残業だなんだと言って客人が半死状態になった宴会中盤に現れたりします。しかもアルコール度数が異常に高い故郷の地酒などを持ってきて改めて客人にふるまいます。一般の日本人はだいたいこれで全滅していました。
そんな飲み会なので終わるのは結構早かったです。私は勝ち残る(?)こともあったのですが、気が付くとみんなトイレにこもっていて、待っていても誰も戻らずそのままお開きということもありました。凄い勢いで乾杯合戦、あっという間に全員死んで終わり。何度もやっているとそのリズムに慣れてきて、前半とばして相手の様子を見てから中盤以降の戦い方を決めるという余裕もできてきました。今では不要なスキルですが。