「思考の整理学」という外山滋比古さんが記した本を読んだことがある人は多いと思います。1986年発行の古い本ですが東大京大で一番読まれた本として注目されて240万部突破のベストセラーになりました。記憶重視の受け身の学習から脱却し自由に考えるための思考法が書かれています。その中の興味深い内容に「インプットした内容をしばらく寝かせて化学反応を起こさせる」というものがあります。インプットした時は解決が得られなくても、テーマの中心部からあえて時間と距離を置くとセレンディピティ(思わぬものを偶然に発見したり思い付いたりすること)が起こるというものです。それは創造的思考に非常に重要なプロセスだそうです。これは語学学習にも当てはまると思います。
多くのインプットを自分に課して毎日単語や文章を暗記し続けて煮詰まってしまい、更にはうまくアウトプットができず嫌になって止めてしまうことがあります。一度止めると怠け癖がついて当分学習に戻れなくなったりします。しかししばらく時間が空いてたまたま会話する機会があったりするとスラスラと言葉が出たり相手の言葉がクリアに理解できたりして不思議に思うことが多々あります。覚えた時は使えない、時間を空けて多少忘れている筈なのに何故かうまく使える。セレンディピティとは少し違うと思いますが、インプットの時間を空けることで脳内の断片的な知識が整理統合されて使える状態になっているのではないかと思います。
個人的にそんな経験を何度かしたので、今ではスランプに陥って勉強をする気がなくなっても、定期的な整理統合の時が来たのだと認識して、むやみに焦らず他の楽しいことをしながら脳の作業が完了するのを待つことにしています。完了すると自然にうまく使えてまた楽しく学習できるようになります。
HSK受験など期日を決めて学習している場合はそういう訳にもいかないですが、習得に中長期で取り組んでいる場合は自分の気分に合わせて意識的に「寝させる」ことが大切だと思います。
「思考の整理学」まだの方は是非ご一読下さい。