20数年前、90年代の終わり頃にいろんな国で仕事をしてきた会社の先輩から聞いた言葉に、「一旦南下して東回りに進んで最後の北上する順にだんだん分かり合えなくなる」というものがありました。その方の経験によると日本人が分かり合える順番は、台湾・パラオ→アメリカ→イギリス→欧州→中東→インド→東南アジア、そして最後が中国だというのです。西を向けばすぐ隣、見た目も使用する文字も似ているのに、価値観が違い、不思議なほど全く分かり合えないということでした。まだ私は中国のことを知らない時期だったので、とても不思議に思ったものです。自身の経験では、80年代終わりに住んでいた大学の寮に何人か中国人留学生がいたのですが、彼らは授業とアルバイトばかりで接点が全くなかったので、どんな人たちなのか知る機会はありませんでした。
2004年から中国の仕事を担当するようになったのですが、実際に中国の人と付き合ってみて先輩が言っていたことを実感しました。中国の前に担当していたコロンビアやタイの人たちと比べて明らかに分かり合える部分が少なかったのです。たとえ外国人であっても常識的にこう考えるだろうということを中国人たちはことごとく違う解釈をして、私が思いもしない方向に進んでいきます。特に不思議だったのは、個人で話している時は通じる話も複数人での話になると途端に訳の分からない方向に外れていくことでした。当時の私にはそれが全く理解ができず悩んだものです。古代から高度な文明を築き上げて常に日本の手本であった中国と、当時の中国人たちが全く繋がりませんでした。
そのうちに中国には日本ではあまり教えられない文化大革命などがあって、社会が混乱し教育が断絶していたことを知りました。よく観察するとどうやらその世代と彼らに影響を受けている世代が分かり合えない、そして近代的な教育を受けてきた下の世代には案外話せば通じるということが分かってきました。年配の人を敬う、トップダウンで上司は絶対、という考え方であるため、上がおかしなことを言っても慮ってあからさまに否定しないのだということも分かってきました。
中国はめざましい発展を続け、生活も経営も近代化してきたので、分かり合える度合いがどんどん増えてきました。最近の若い人などは日本の若い人よりも素直でスマートな人がたくさんいます。引き続き交流を続けることで更に分かり合えるようになると思います。
中国を過度に擁護するつもりはないですが、中国人がダメだという人の中には、90年代の中国人の印象が根強く、変化してきていることを知らない方が多いと思います。変わってきた中国を自らの目で確かめられたら印象は変わるだろうと思います。