中国のみならず海外に進出した日本の企業ではローカルスタッフの離職に悩まされるケースが多いです。一方で採用は比較的順調です。理由はいろいろあると思いますが私が見聞きしてきた実例では、教育訓練が丁寧で充実しているから入社しますが昇進や給与UPが望めずに他へ転職していくパターンが多かったです。
欧米系企業と比較すると、日系企業は教育訓練については確かに多くの時間を割いていると思います。ただ欧米企業は文書化・マニュアル化が徹底しており、それを自分で読んで勉強するスタイルであるため、あえて教育という名目で時間をかけていないように思います。対して日系企業はマニュアル化ができておらずOJTで教えていくスタイルが多いです。日本の本社に派遣して教育したりもします。教わる方にとっては懇切丁寧でありがたいと思います。しかし問題は教えたスタッフが離職してしまうと後には何も残らないことです。海外では特に意識して文書化を進める必要があります。とは言っても一からマニュアルを作っていくのは大変ですし技術やプロセスは進化していくので改訂も必要です。そこで、研修生に学んだことをレポートとして文書化させてそれを共有のマニュアルとし、以降スタッフに研修を受けさせるたびにそれをフォローアップさせるのが網羅的で効率的だと思います。
そして教育を受けたらそれを糧に他の会社に転職していく人がとても多いです。給料を倍にするとか現企業より上の職位を与えるとかの条件で、優秀な人ほど多くが離職していきます。それでも「給料を倍出されるなら仕方がない」と対策を打たず放置している例が多く見られます。問題はそこにあります。外国人は日本人と比べて会社への帰属心が薄く自己の成長に貪欲ですから、それに応じた人事制度が必要です。日本式の「長期間同期横並び」終身雇用を前提とした「緩やかな給与上昇」では、優秀な人ほど不満を感じて離職していき、残るのは平均以下の人たちということになります。優秀な人には特別な待遇や昇進ルートを準備するなど、メリハリのある人事制度が必要です。