私はコーヒーが好きなのですが、中国の仕事を始めて困ったことの一つが、おいしいコーヒーが飲めないことでした。最初の衝撃は忘れられません。中国に韓国ソウル経由で飛行機で移動、ソウルまではアシアナ航空、ソウルからは中国南方航空でした。機内でコーヒーを頼むと、アシアナ航空では普通の美味しいコーヒー、でも南方航空で紙コップに注がれたのはうっすら茶色がかったトロリとしたミルク色。嫌な予感がしながら口をつけたら温くて甘々のコーヒー、まるで子供の頃に飲んだコーヒー牛乳でした。周りの中国人たちは美味しそうに飲んでいます。今考えればおかしいのですが、私は思わずCAさんを呼んで英語で「普通のコーヒーはないですか?」と聞きました。CAさんは怪訝な顔をしていました。当時の中国人にとってはコーヒーといえばこれがスタンダードみたいだったので無理もありません。
中国国内でコーヒーを探してもドリップ式もないですしインスタントコーヒーもありません。あるのはスティック状の袋に入ったコーヒー&ミルク&砂糖の粉くらいのものでした。一応買うのですがそんな甘ったるいものを何杯も飲める筈もなく、一杯飲んだら気分が悪くなってそれ以上飲めませんでした。それを知ってからは日本から持っていくようにしていました。
スターバックスが中国に出店した時には「これは失敗するぞ」と思いました。しかし私の予想に反して大成功、コーヒー文化が一般に普及しました。近年では中国でも美味しいコーヒーが飲めるようになりました。最近ではセブンカフェまであり手軽に安価で購入できます。同僚からお土産に頂いた雲南コーヒーなどは絶品でした。私にとっては中国での仕事を避ける理由の一つがなくなりました。
でも当時のことがトラウマになっていて、今でも中国の航空会社のフライトではコーヒーを頼む勇気がありません。紙コップに注がれる液体がコーヒー牛乳なのかコーヒーなのか、未だに知りません。次回乗る時こそ勇気を出して確認してみようと思っています。