大気汚染の改善

日本人が中国に行きたがらない理由の一つに大気汚染があります。中国の大気汚染は90年代初頭から経済発展と共に顕在化し始め、2012年から2013年頃には中国各都市で深刻な状態になりました。特に健康被害をもたらす問題はPM2.5と言われる有害な微粒子物質です。肺の奥や血管に入り込みやすく、気管支炎を引き起こしたり喘息を悪化させ、肺癌を引き起こす要因になります。中国では癌の中で肺癌が死因のトップであり、特に都市部の羅患率は農村部をはるかに上回っているそうです。気管支炎、喘息も増加し、死者まで出ています。

原因は火力発電や各種工場、自動車からの排気ガス等の人位由来のもの、黄砂や森林火災等の自然由来のものがあります。大気の対流が少ない内陸の都市では汚染大気が滞留し蓄積していく状態でした。経験のない方は驚くと思いますが、真っ白で視界が5mもないような日もあり、自動車の運転は禁止、道路は閉鎖、学校は休みになったりしていました。2014年に北京に出張した時には空気清浄器がなかったためかホテルの部屋の中まで真っ白で逃げ場がない状態でした。部屋にいても同じなので外に出て北京大学や清華大学に散歩に行ってみましたが、そんな中でもマスクをしているのは外国人だけ、ほとんどの中国人はマスクをしていませんでした。マスクをした方がいいと言っても笑って聞かない人が多かったです。近い将来中国では関連の病気が多発するだろうと考えたものです。

ただ、その状態も徐々に改善が進んでいて、2014年をピークに数値は大きく下がってきています。都市部におけるPM2.5の平均濃度は2018年〜2019年で20%低下したそうです。私が近年住んできた南京は以前はあまり見られなかった青空が、2018年頃からは晴れた日にはほぼ毎日見られるようになっています。AQI値もPM2.5で30から50くらいで安定しています。とりあえず健康被害に怯える状態からは脱してきていると思います。

それでも2019年のWorld Air Quality Reportによると、汚染が深刻な国で中国は11位、汚染が深刻な都市のトップ200に117の都市が入るなど、まだまだ良いとは言えない状況です。中国から日本に帰国すると外がクリアに見えて急に目が良くなった気がする感覚はまだ続いています。

政府による環境政策も進んでいて、そこに新型コロナの影響で環境衛生意識が上がっていますので、今度は更に改善が進むものと期待しています。

中国のエネルギー転換による環境保全分析―学際研究による大気汚染(PM2.5)の改善効果

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