中国学生の「勉強」を見習う(★)

勉強という言葉は中国語では「学習」ではなく「無理に強いる」という意味です。現代の中国学生の勉強は、日本でいう勉強より本来の意味で表すに相応しい状況になっていると思っています。中国の受験戦争が凄まじいことは広く知られてきたと思います。以前は生まれや親の人脈の有無で人生がほぼ決まってしまう国で、人々は無駄な努力はしなかったり海外に活路を求めて出て行ったりしていました。その反動もあるのだと思いますが、能力さえあれば生まれに関係なく成功を手にできる国になった今、みんな気合を入れて勉強します。一人っ子政策が続いたので親や祖父母の期待や応援も尋常ではなく、子供たちはものすごいプレッシャーの中、必死で勉強をしています。

2019年の高考(日本のセンター試験にあたる大学共通試験)の受験者は約1031万人だそうです。日本のセンター試験受験者数は約58万人ですから、日本のなんと約18倍です。人口比よりも大きく、中国の方が若年者の比率が大きいことを考慮しても、大学入試にチャレンジする人の比率は日本と同等かそれ以上だと思います。さすがは科挙の国です。そして近年では各地の高考の試験会場前で、チャイナドレスを着た母親たちが子供の試験が終わるのを待っている姿が見られます。チャイナドレスは中国語で「旗袍」なので、成語「旗开得胜」(幸先の良いスタートをきる、好成績をおさめるという意味)にかこつけた一種の「ゲン担ぎ」なんだそうです。親の力の入れようが分かります。

子供たちは幼少の頃から勉強漬けの生活をしています。幼児から習い事を始め、小学校に上がると学校でガッツリ勉強です。クラブ活動などはなく進学校では体育の時間も算数などに切り替えられます。授業は6時とか7時とかまで続きます。そして大量の宿題を与えられ、帰宅してからは夜遅くまで宿題です。教師は担当する生徒の成績で評価が決まりますから、こちらも必死です。生徒何人かのグループを作って、母親に夜の宿題の進捗を管理させ、微信で報告させます。各生徒の母親たちは子供の宿題が終わったらグループのリーダーの母親に報告をし、リーダーの母親は全員の終了が確認できたら先生に報告します。先生は各グループの宿題完了時間を公表して、遅いグループを叱り指導します。そんな仕組みを作っているので親も子も必死にならざるを得ません。中国では女性もほとんどが会社で働いているので、母親は昼は仕事、夜は子供の宿題のサポートでクタクタになっている人が多いです。窓から見えるマンションの部屋では、小学生高学年くらいの子供が、平日は夜遅くまで、休日は朝から夜まで母親がついて勉強する姿が見えます。

そんな状態を見聞きしてきて、中国語もこれくらいやったらできるようになるだろうなとは思うのですが、さすがに見習う気になれません。80后くらいから言われ始めた「詰め込み学習で知識は多いが創造性や協調性に欠け、何でも親にやってきてもらったから自分では何もできない、そんな人が増えている」が、90后になるとさらに増え、現在の中国の教育に疑問を感じる人も増えています。私の知人にも中学生くらいからアメリカやシンガポール、マレーシアなどに留学させる人が増えています。選択肢に日本が入っていないのは残念ですが、考えてみれば日本も暗記詰め込み教育なので選ばれないのは当然かもしれません。中国も日本も教育について今一度考えてみるべき時期なのかもしれません。

中国はなぜ「学力世界一」になれたのか – 格差社会の超エリート教育事情 (中公新書ラクレ)

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