愛すべき老中国:白酒

白酒は中国の伝統的なお酒です。アルコール度数はほとんどが40度以上で、60度に近いようなものもあります。昔の中国ビジネスでは懇親会で白酒で乾杯を繰り返すのが一般的でした。そのために日本の会社では中国に社員を派遣するのに「お酒が飲めること」を、公式ではないにしても考えて人選していました。その飲み方は一般の日本人には考えられないほど激しく、中国人との宴会で日本の会社員が急性アルコール中毒で亡くなったこともあり、社会問題にもなりました。

ご経験のない方は「嫌なら自分の意思で飲まなければいいじゃない?」と言われると思います。ある知人は奥さんから「強要されると言っても、押さえ付けられて口を開けさされてお酒を流し込まれる訳ではないよね?」と言われていました。その通りなんです。しかし中国人の熱烈歓迎、お酒を通して仲良くなろうとする文化、「これからよろしくお願いします」という挨拶等々の中、一方的に飲ませるのではなく中国人側もしっかり飲みます。男性だけでなく女性もしっかり飲みます。しかも以前は飲酒運転も当たり前でしたから制約が全くありませんでした。そんな中で自分だけ飲まないというのは本当に難しいのです。

何回も乾杯を繰り返す飲み方なので、小さなお猪口のようなグラスが用意されます。しかし小さいといっても強い酒なので何度も乾杯するとすぐに酔います。しかも酒が豪快なことで有名な東北地方では、小さなグラスはまどろっこしいと下げさせて、普通のコップでガンガン乾杯していました。

そんなにバカ飲みするお酒を後日店で見付けて、何千元もする高価なものだと知った時は驚きました。ただ、偽物も横行していましたし、粗悪なものもたくさんありました。粗悪な白酒を飲んで死亡する人もかなりいると聞きました。飲食の安全管理がデタラメな時代でしたので、得体の知れないものを飲むのは怖かったです。

どうしても飲みたくない場合は中途半端に飲んだりせずに、最初から一滴も飲まないことが重要です。「お酒は弱いのでちょっとだけ」とか「ビールだけ」とか言っていると、「お酒が飲めるのに私の乾杯を受け入れてくれない」=「私を拒絶している」と感じます。飲めないと言えば言うほど頑なに相手を拒絶していることになるのです。中国人が相手に飲めないと言われても必死で飲まそうとするのは、友情を深めたいからなのです。だから飲むのか飲まないのか(飲めないのか)最初からはっきりしておく必要があるのです。

時代の変化と共にお酒の文化も大きく変わりました。ワインブームが起こったり外国から軽いお酒が入ってきたりして、白酒以外もたくさん飲まれるようになりました。贅沢を抑制する政策によって宴会も減りました。飲酒運転の刑罰が厳しくなり、乗る人は飲まなくなりました。若い人の中にはお酒そのものを飲まない人が増えました。

そのような中、改めてじっくりと白酒を飲んでみると、芳醇まろやかで美味しいんです。強要されるからイヤで、それがトラウマになって飲みたくなかった白酒ですが、元々は中国の銘酒なんです。これからはその美味しさに改めて気付く人が増えて、人気が出始めるのではないかと思います。

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