随分減ってきましたが以前は観光地や日本料理屋に行くと必ず愉快な日本語に遭遇していたものでした。文字でいえばひらがなカタカナの形がおかしいもの、ひらがなとカタカナが混じっているもの、音でいえば間違って聞き取った音をそのまま文字にして恥ずかしい内容になってしまっているもの、意味でいえば中国語を直訳して滑稽な内容になっているもの、これらを幾つ見つけるか友人と競争したりしていたものです。しかしそんな中にもおかしいながらも秀逸なものもありました。一番感心したのが西塘で見つけた案内地図の表記で、所在地を示す赤い矢印の上に英語では「You are here」、これは普通ですが、日本語では「私の居場所が分からない」と書いてありました。最初は「なんだこりゃ?」と笑ってしまいましたが、よくよく考えてみると確かに“居場所が分からない私がいる位置”を示しているわけで、間違いどころか極めて正確に状況と位置を表しているのだ!と気付き、感心してしまいました。考え過ぎでしょうか?
近年では日本語の有識者が増えてきましたし、観光地については政府主導で大学などに依頼して修正が進んでいます。今ではすっかり少なくなった愉快な日本語、見付けたら大喜びで写真を撮って友人と共有したりしています。しかし何故中国にはこんなに愉快な日本語が多いのかと考えると、間違っていても気にせず使う人が多いということもありますが、なんとか日本語を使って日本人と交流しようとしてくれている人が多いということもあると思います。そう考え付いた時から私には愉快な日本語が中国人のありのままの温かい心を伝えてくるように思えてきました。