中国のテスラを目指すとしていた新興EV(電気自動車)メーカーの拜騰汽車(BYTON)が中国での事業活動を7月1日から停止することになりました。事業停止期間は暫定的に6カ月、その間に一部の幹部社員が会社経営の維持とリストラクチャリングを行い、それ以外の従業員は解雇はされず待機となるそうです。従業員への給料の未払いが総額14億円、順次払っていくそうです。
BYTONは3月に従業員への給与を支払えなくなり、4月末には上海オフィスを閉鎖、その後、南京本社で開発を率いるキーマンが離職、そして南京工場の電気も止められました。米シリコンバレーと独ミュンヘンのオフィスは既に閉鎖の手続きが始まっているそうです。
BYTONは17年に独BMWの元技術者などが設立した南京市に本社を置く会社です。中国の車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)や国有自動車大手の中国第一汽車集団が総額5億ドル(約537億円)を出資し、日本の丸紅も20年1月に資本業務提携を発表していました。しかし、2019年末に開始するとしていた生産は2020年になっても開始できず、中国政府の補助金の減少や新型コロナウイルス問題の影響で資金繰りに行き詰まったとみられています。工場も出来上がってからの事業停止、お金を使うだけ使って全く回収できない最悪の事態に陥っているといえます。
南京にできた会社なので南京の自動車会社や部品会社から大量の人材が引き抜かれました。新たな事業創出ですし給料も倍になるということで多くの人が喜び勇んで転職していきました。それが残念な結果になってしまいました。逆に誘いを断った人はほっとしています。完全に明暗が分かれた形です。
誘いを断った人に話を聞くと「BYTONは経営者が外国人で慎重過ぎるからかとにかくやることが遅い。EVブームが盛り上がった18 年頃に、企業PRだけではなく、生産はできなくても存在感を示す具体的な実績を残せなかった時点で競争の土俵に上がれなかった。(だから行かなかった)高級EV路線を目指していたがそこは既にテスラとNIOが市場を確立していて今更入る余地はない。」との意見でした。少なくとも中国市場においてはその通りだと思います。
研究開発に莫大な投資をして巨大な工場を作って一台も作ることなく事業停止。仮に再開できるにしても大きな路線変更を余儀なくされるでしょうし、瀕死の状態に陥った今、経営を支える優秀な人材が集まるのか、人材が定着する求心力を持つことができるのか、大いに疑問です。