これは昔の東北地方特有のものかもしれませんし、あるいは今でもどこでも同じなのかもしれませんが、印象深かったのでご紹介したいと思います。
以前台湾で結婚披露宴に参加させて頂いたことがあり、ものすごい大きな会場で親族や友人、友人の友人がたくさん集まって延々と飲み食いしながら楽しんでいました。中国東北地方で協力会社の副社長の娘さんの結婚披露宴に招いて頂いた時には、台湾での経験を思い出し、昼からでしたが夜にも延々と飲むのだろうなと思いました。服装は中国だからある程度カジュアルなものでいいのだろうなと思いながらも、やっぱり失礼があってはいけないということで日本人の同僚と相談して礼服っぽい格好で行くことにしました。
大きなホテルの会場に着くと中国人の招待客たちは予想通りくだけた服装、我々日本人グループだけ正装で浮いていましたが、これは想定の範囲内なのでOKということで会場入りしました。大きな会場で招待客は二百名ほどはいたのではないかと思います。やがてものすごい大音響と大きなスクリーンに映る二人のにこやかな映像を背景に、新郎新婦の入場です。二人の席には大量の花、招待客の席には美味しそうな食事と大量の酒、豪華な式の始まりです。市政府のお偉いさんとか会社のお偉いさんとかのスピーチが終わった後、会場全体で祝い声高らかに乾杯です。すごい熱気でした。日本であれば恩師や上司のスピーチ、友人による出し物や新郎新婦のお色直しと続いていくところですが、この宴では新郎新婦とご両親が各テーブルに挨拶にまわり始めました。彼らが行く先々でお祝いの言葉と共に乾杯です。この調子で全席回ってその後イベントが続くのだろうから、ものすごく長くなるだろうなと思われました。
ところが、テーブルでの乾杯が終わるとお客はそそくさと会場を出ていきます。アレ?と思い観察しているとどのテーブルも乾杯が終わったら退出してどうやらそのまま帰宅しているようです。やがて主賓たちが私たち日本人グループの席に来て乾杯。しかしその後どうすべきなのか分からず、他のお客に聞いたところ「主賓に挨拶さえしたら帰っても残ってもどちらでもいい」とのことでした。周囲は次々と帰って行きましたがやはり我々は最後までいた方が良いだろうと考え残っていました。一時間もしたら客は全員いなくなり、知らぬ間に主賓たちもいなくなり、残っているのは大量の食事とお酒、そして酔っ払っていい気持ちになった我々正装の日本人だけでした。片付けを始めたホテルの係員にちょっと迷惑そうに「ワイン持って帰っていいですよ」と言われ各自一本ずつワインを抱えてようやく退出したのを覚えています。日本人にとっては不思議な経験でした。
その後、同僚の結婚披露宴に招かれた際には、前回の経験を生かしカジュアルな服装で参加して、主賓にお祝いの言葉伝えて乾杯してから、スッと帰りました。